フォークランド諸島に暮らす100万羽のペンギンたち ここにも「EU離脱」の余波が
ペンギンというと氷の上を歩いているイメージがありますが、草の生えた岩や砂の上で暮らしているペンギンも少なくありません。
南大西洋のアルゼンチン沖に浮かぶイギリス領「フォークランド諸島」には、100万羽を超えるペンギンが暮らしています。
子育てシーズンだけやって来る種類も含めると、合計で5種類(オウサマ、ジェンツー、イワトビ、マゼラン、マカロニ)のペンギンがこの島々に生息していることが分かっています。
19世紀にはペンギンの体内から取れるオイルを目当てに大量のペンギンが殺害されていたことがありました。
1867年には5万ガロンのペンギンオイルが製造されたという記録があり、これは50万羽のペンギンが殺害された計算になるということです。
また卵は人の食用として採取され続けていました。
しかし1999年以降、フォークランド諸島で暮らすペンギンやその卵を外に持ち出すことは禁止されています。
【漁業とエサの取り合い】
一方、今でもペンギンたちの生活を脅かす事象は別の形で続いています。
フォークランド諸島は主にイカ漁が盛んな海域として知られています。
漁業会社に許可証を発行し、そのライセンス料を徴収するのがこの島々の経済の大きな収入源となっているのです。
そのため大規模な漁船がこの島々の周辺にやって来ますが、11月から2月にかけてのペンギンの子育て期間には漁業は禁止されています。
しかし、たとえ許可されている期間であっても大きな漁船が大量にイカや魚を持って行ってしまうため、同じく海の小動物たちをエサとして暮らしているペンギンの食べる分がなくなってしまう、という問題が生じています。
他にも一般の観光や無許可で行われる卵の乱獲などがペンギンたちの生息を脅かしています。
また基本的に孤島であるため、「鳥ポックス」(鳥類特有のウィルス性の病気)などといった感染症の流入に対する抵抗力が弱いことも、この島に暮らすペンギンたちにとって脅威なのです。
【ここにもEU離脱の影響が】
欧州連合には「BEST」(Biodiversity and Ecosystem Services in Territories)というスキームがあり、これまで多額の資金がフォークランド諸島の自然環境保護のために提供されてきました。
しかしイギリスのEU離脱後は、この資金が止められてしまう可能性が出てきたのです。
この資金はフォークランド諸島の動物保護だけでなく、気候変動対策のプロジェクトにも役立ってきました。
地球温暖化が島々に生息する植物たちにどのような影響を与えているか、そのパターンを研究するために貢献してきたのです。
また近海に生息するイワシクジラの保護にも役立てられてきました。
このBESTという資金スキームはEU加盟国の海外領土の保護に適用されるものです。
つまり、EU加盟国でなくなってしまうとこの資金の提供を受ける権利も失うことになります。
EUからの資金がストップしてしまった場合、代わりにイギリス政府が資金を充てたとしても十分ではない、と専門家たちは指摘しています。
また現時点では、一般企業から資金の提供申し出はないということです。
イギリス政府は、あるファンドから250万ポンドが2019年まで、また別のファンドから480万ポンドが向こう4年間、それぞれ適用されると回答しています。
しかし、自然環境保護はもっと長いスパンで進めるべきものであることを考えると、やはり資金不足の可能性が心配されるところです。
(出典)