虐待の末に建設現場に置き去りにされた犬がもう一度人と生活を始めるまで
これは新種の動物ではありません。
れっきとした犬です。
トルコで保護された迷い犬の「パスカル」(4歳)。
発見されたとき、この犬はビルの建設用地に置き去りになっていました。
報告されているところによると、二人の子供がいたずらでパスカルに危害を加えた、ということです。
しかも単に建設現場に置き去りにしただけでなく、パスカルに産業用の接着剤をベタベタと塗り付けるという、きわめて悪質なことまでしていたのです。
「子供のいたずらだからしょうがない」ではすまされない、度の過ぎた虐待。
接着剤は建設現場で使われるもので、乾燥するとセメントのように固まってしまうものでした。
そのためパスカルの毛はカチカチに固まってしまい、思いどおりに体が動かせなくなっていたのです。
まずはパスカルの毛をすべて刈ってしまうしか対処法はありません。
接着剤と一緒に毛にこびりついていたゴミなどはきれいに取れましたが、やはり化学物質に触れたせいで皮膚も大きなダメージを受けていました。
そのため治療用に用意された特別なお風呂に何度も入り、皮膚を治すことに専念しました。
ここまでひどい状態に追い込まれた経験のせいで、当然のことながらパスカルはしばらく人間を信用しようとはしませんでした。
しかし手厚く治療に専念してくれる獣医の先生には、少しずつ心を開いていきました。
そして救護チーム一丸の心のこもったケアもパスカルには伝わり、ようやく人間たちと接触できるようになったのです。
リハビリは数か月に及びました。
保護施設の努力のおかげで皮膚も元どおりになり、毛も生えてきました。
ようやくふつうの生活ができるようになり、里親探しを開始。
まもなくスペインで新しい家族に迎えれらることになりました。
この家ではすでに別の犬を一頭飼っており、パスカルはその犬とも兄弟のように仲良く暮らしているということです。
パスカルがこのような状況に追い込まれたのは、子供たちの悪質ないたずらが原因でした。
それでもパスカルは人間を許し、もう一度心を開いてくれたのです。
「ものを盗んではいけない」とか「人を傷つけてはいけない」ということと同じように、「自分に危害を加えない動物とは仲良くする」ということが常識的な倫理として世界の子供たちに認識されてほしいと思います。