7年間檻の中に閉じ込められていたオランウータン 森林への復帰にむけてリハビリに励む
ただの物置にしか見えない小さな小屋。
中には農具などでも入っているように思えます。
しかし、ここにオランウータンが7年間にわたって閉じ込められていたのです。
オランウータンのエイミーは、生まれ育った森林からはるか遠くにある民家で、ペットとして木製の檻の中に閉じ込められていました。
さらに檻の中では、飼い主によって首輪をされ鎖でつながれていました。
救助のために檻を開けても、最初エイミーはまったく身動きしません。
死んだような目をして、ただ救助員のほうを見るだけです。
今まで放っておかれたさみしさのせいで、まるで生きることをあきらめたかのように、何に対しても興味を失ってしまっていたのです。
救助員が手を差し伸べると、ようやく反応しました。
この動画でそのときの様子を見ることができます。
たとえ自分を助けてくれる人間に対しても、すぐには心を開けない、それほど心が死んでしまっていたのです。
この写真では救助員を恐々と見上げています。
神経質に、疑い深く相手を見つめる様子は、私たち人間とまったく変わりありません。
エイミーが落ち着いた様子を見せたところで、ようやく鎖を切り、首輪を取り、救い出すことができました。
エイミーに付けられていた首輪はとてもきつくなっており、首には深い傷が残っていました。
飼い主は「ここ1か月間だけ檻の中に入れているだけで、それまでは家の中でいっしょに暮らしていた」と主張しています。
しかし獣医がエイミーの体を診察すると、背骨や足の骨が完全に曲がってしまっていることがわかりました。
エイミーの年齢は7歳くらいと推定されますが、おそらく生まれてすぐペットとして捕獲され、その後ずっとこの狭くて不衛生な檻の中で過ごしてきた可能性があると見られています。
つまり1か月どころか、生まれてから7年間にわたって首輪をはめられ鎖でつながれていた可能性が高いのです。
野生の環境では、オランウータンの子供は6~7歳になるまでお母さんと一緒に過ごします。
そして木登りなど森林で生活するために必要な技術を学んでいきます。
しかしエイミーの場合、その一番大事な7年間をこの薄汚い檻の中で過ごさなくてはいけなかったのです。
またエイミーの足からは銃弾の破片が見つかりました。
これはエイミーだけのケースではありません。
ボルネオ島ではパームオイル製造のための森林破壊が続いており、住処を奪われたオランウータンたちは食べ物を求めて人里に現れてしまいます。
現地で農業を営む人たちにとって、農作物を荒らすオランウータンは「害獣」とみなされ、ライフルなどで撃ち殺されてしまうのです。
そのとき子供のオランウータンが生き残っていると、それをペットとして売り飛ばしお小遣い稼ぎをする、ということが多く行われています。
つまり、エイミーと同じような苦しい状態に置かれているオランウータンはほかにもたくさんいるのです。
現在は保護施設で暮らすエイミーですが、初めのころはまったく元気がなく、落ち込んだような状態が続いていました。
ハンモックのうえで、ずっと一点を見つめているような時間の過ごし方をしていたようです。
しかししばらくすると元気になり、バナナやオレンジなどを自分で食べるようになりました。
エイミーはこのリハビリ生活で、餌の食べ方やほかのオランウータンとの共同生活の仕方を少しずつ学んでいます。
そして保護施設でのリハビリが終われば、エイミーは森に返されることになっています。
しかし体に残る障害などのせいで、森での生活になじめない可能性もあります。
その場合、エイミーはリハビリセンターでこのあともずっと暮らし続けることになるのです。
Amy the orangutan | International Animal Rescue
Orangutan Rescued From Crate in Borneo