失われ続けるコアラの生息地 森林伐採を許可する協定が延長の可能性
コアラといえばオーストラリアですが、実際は広大なオーストラリア大陸の東海岸だけに生息しています。
(https://www.savethekoala.com/about-koalas/interesting-facts)
このうちニューサウスウェールズ州のコアラ生息数は、1990年から2010年の20年間に推定で30%減少したといわれています。
州の環境保護庁が5月に発表した報告によると、コアラたちの減少傾向は今でも続いており、少なくとも1種については絶滅の危機に瀕していることが分かりました。
【森林伐採が合法で進められた20年】
1997年、ニューサウスウェールズ州では「地方林業協定」が結ばれました。
この協定により、国や州が所有する土地についてはその後20年間にわたって自然森林の伐採が許可されてきました。
来年2017年には協定の期限が訪れます。
しかし、現在の方針では延長することになっているのです。
成熟した森林ほど多くのコアラが生息できることが分かっています。
したがって、いったんさら地にした土地に木を植え人工の森林を新しく造成しても、その成熟度は低いため、コアラにとっては住みづらい環境になってしまうのです。
このため州の環境保護庁は、森林の伐採を規制する必要があると指摘しています。
またオーストラリアの国立公園協会は、来年の協定期限終了を機に伐採の影響をあらためて確認し、続ける必要があるかもう一度判断する必要がある、と述べています。
【私有地でも伐採が進む】
森林伐採が止まらないのは国や州の所有地だけではありません。
私有地についても土地開発法の改定案が議会に提出され、規制がゆるめられようとしています。
今月の議会に提出されている改定案によれば、農家が無許可で自然林を切り倒したり、他の場所の自然保護活動に協力することの見返りに自分の土地を開拓できる「オフセット」条項が与えられたりしています。
世界自然保護基金(WWF)は、この改定案のうち一つでも実行されれば、コアラの生息地が220万ヘクタール失われてしまうと警告を発しています。
それに対してニューサウスウェールズ州政府は、WWFのこの警告は「心配性な発言だ」と反撃に出ました。
州政府の主張としては、この法律ではコアラ生息地の開拓は禁止されているため、生息数には影響ない、というものです。
しかし国立公園協会によれば、この法律の実態は事実上「コアラの生息地を特定し、そこを起点にして開発が行われてしまう内容」になっていると指摘しています。
また、この法律は21年前に施行されているにもかかわらず、コアラの生息地として保護区指定されたのは今までわずか4箇所だけなのです。
いまニューサウスウェールズ州は「コアラを守るか、それとも森林伐採と土地開拓を許して絶滅に追い込むか?」という選択を迫られています。