ライオンのセシル殺害から1年 相変わらず改善しないトロフィーハンティングの実情

 

 

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アフリカのジンバブエでライオンのセシルが殺害されて1年が経ちました。

 

セシルの事件を機にいわゆるトロフィーハンティングに対する批判は高まっていますが、その一方でトロフィーハンティングからの収益(税収や手数料)がアフリカ諸国の環境保全に役立っているという主張は根強く残っています。

 

このたびアメリカ議会自然資源委員会は、これらの収益が絶滅危惧種保全に使われているという証拠はほとんど見当たらない、という内容のレポートをまとめました。

 

「トロフィーハンターたちは規則に従ってハンティングを行っておらず、またトロフィーハンティングを提供している業界への規制が必要であることが判明した」とレポートは述べています。

 

 

【トロフィーハンティング収益の使われ方】

トロフィーハンティングのためにハンターたちが支払うお金には、殺害した動物(の頭部)をトロフィーとして所有できる権利や、プロの案内役によるガイド料、交通費、宿泊費が含まれます。

 

論理的には、こうして徴収されたお金はアフリカの経済的に貧しい国々の自然保護プログラムを維持し、現地に住んでいる住人たちへの援助として使われることになっています。

 

実際、かつてはこの本来の目的どおりにお金が使われていたこともあったようです。

 

しかし今回のレポートでは「トロフィーハンティングの収益金の流れを追ってゆくと、本来の目的からは逸れたところで使われたり、自然保護には使われていなかったりする例を発見した」と指摘されています。

 

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(セシルを殺害したロバート・パーマー氏が経営する歯科医院の入り口。「地獄で腐り果てろ」という抗議の文句が見える) 

 

【アメリカ国内への持込にも問題あり】

また、アメリカ国内への持込についても大きな問題があるようです。

 

アメリカの絶滅危惧種法によると、トロフィーとして殺害された動物はアメリカ国内に持ち込むことができることになっています。

 

これには、絶滅危惧種の生息数が減少しない場合に限る、ということが条件となっています。

 

しかしレポートによると、このルールは必ずしも常に守られていないのが実情なのです。

 

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【輸入許可要求が十分に機能していない】

ここで指摘されているのは「合衆国魚類野生生物局」という組織が持つ権限発動の適切性です。

 

魚類野生生物局には、絶滅危惧種については輸入許可を得るように要求する権限があります。

 

しかし上記のレポートによれば、この魚類野生生物局はあまりこの権限を発動しない傾向があるのです。

 

2010年から2014年の間、魚類野生生物局が輸入許可の取得を要求したのは1件だけでしたが、実際は輸入許可の必要な2,700もの動物がトロフィーとして輸入されていたことが判明しました。

 

たとえばヒョウについては1,469がトロフィーとして輸入されましたが、魚類野生生物局はひとつも輸入許可の取得を要求していないのです。

 

 

【セシルの死を無駄にしない】

トロフィーハンティングで殺害された動物をトロフィーとして自国に持ち帰るのは、アメリカ人が最も多いことが分かっています。

 

そのため、アメリカ合衆国政府こそがトロフィーハンティングの現状を変える責任を負っている、と言うのが多くの意見となっています。

 

そしてこれを後押ししたのが、ライオンのセシル殺害の事件でした。

 

セシルの命は心無いハンターによって奪われてしまい、二度と戻ってくることはありませんが、その存在は今も状況改善へのインスピレーションとして生きているわけです。

 

 

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下側、地面に座っているのがセシル。これが生前のセシルが写っている最後の写真といわれている

 

   

http://www.nytimes.com/2016/06/14/us/politics/trophy-hunting-fees-do-little-to-help-threatened-species-report-says.html?_r=0