ヒョウによる家畜被害を保険がカバー これで酪農家も安心?

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ペルシャヒョウは「イランヒョウ」とも呼ばれ、その名の通りイランやアルメニア、ジョージア(旧グルジア)などに生息しているヒョウの一種です。

 

ネコ科の大型動物のほとんどがそうであるように、ペルシャヒョウも絶滅危惧種に指定されています。

 

 

【酪農家による絶えない殺害】

しかしながら、この絶滅危惧種をイランの酪農家たちが撃ち殺してしまうという事態が続いてきました。

 

大切な家畜を襲ってしまうからです。

 

主に夜中に獲物を狙うヒョウたちが、酪農家が寝ている間に、彼らの大切な収入減である家畜を無惨に食い殺してしまうという事件が後を絶ちませんでした。

 

木登りの得意なヒョウに対しては、柵などを設けてもあまり防御として役には立ちません。

 

その結果、酪農家たちは自らライフルを用意し、ペルシャヒョウが踊りこんでくるところを狙って撃ち殺す以外に出来ることはなかったのです。

 

 

【「家畜損害保険」の登場】

こんな状況に対し、イランでは新しい保険が提供されることになりました。

 

この保険はペルシャヒョウが家畜を襲ってしまった場合、家畜の持ち主である酪農家には保険金が支払われる、という内容のものです。

 

つまり、「絶滅危惧種に危害を加えなかった結果、やむを得ず発生してしまった損害について補償される」というサービス内容の保険になっているのです。

 

これが適用されれば、(大事に育ててきた家畜が食い殺されてしまうことによる心痛は私たちの想像を絶しますが、)少なくとも生活のために絶滅危惧種を殺さなくてはいけない、という最悪の状況は防ぐことはできると期待されています。

 

   

 

【ロシアでも同様の保険サービス】

同様の保険はロシアのヒョウにも採用され始めているようです。

 

イランに生息するペルシャヒョウに対して、ロシアに生息するのはアムールヒョウと呼ばれます。

 

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アムールヒョウは2007年には30頭のみという極端に生息数が減った時期がありましたが、近年のロシア政府や動物保護団体などの努力により、2015年には70頭にまで増えたとも言われています。

 

しかしこの頭数の増加が上記のイランの場合と同様に、家畜への被害の増加につながっているという現状もあります。

 

ロシアでもこのような損害をカバーする保険が登場し、同じく絶滅危惧種であるアムールトラによる家畜襲撃とともに、補償対象とされているのです。

 

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【いろいろと問題もあり】

昨年6月、子牛を殺害されたロシアの酪農家が保険金を請求したところ、大麦70袋が支給されただけで済まされてしまった、という報道がありました。

 

ロシア政府がこの保険を導入した際に行った発表では「最高320万円(相当)の保険金が支払われる」はずであったため、「大麦70袋」という対応に対しては当然のことながら批判が多く寄せられました。

 

また上記のようにわずか70頭にすぎませんが、アムールヒョウの生息数が増えた結果、家畜に対する被害の頻度も増えてきています。

 

つまり、保険によって補償すればするほど、補償をしなければいけない案件も増えてゆくという事態が今後想定されるのです。

 

イランで今回の保険を発表した環境大臣は、この保険を高く評価しその効果を期待しながらも、「我が国の自然を守るためには、やはり最終的には個人々々のイニチアチブが大事なのです」と述べています。 

 

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