絶滅危惧種のスローロリス それでも続けられる密猟と虐待
YouTubeにはスローロリスを撮影した動画が多く投稿されており、この動物の可愛らしい様子が世界中でシェアされています。
こうした投稿がネットで話題になったことから、近年スローロリスのペットとしての需要がとても高くなっていると言われています。
その結果、この小動物もご多分に漏れず、業者たちの密売のネタになっているのです。
その利益は莫大なものだと言われており、たとえば東アジア地域では、スローロリス一匹が20万円相当で取引されていることが分かっています。
スローロリスは絶滅危惧種ですが、このような密売行為がますます生息数の減少を加速しているのです。
【密売されていたところを救出】
ジャワ島はスローロリスが生息する場所の一つであり、そのためインドネシアではスローロリスの密猟・密売が横行していることが分かっています。
このほど首都のジャカルタで闇取引をしていた業者が警察の手入れを受け、5匹のスローロリスが救出されました。
5匹すべてがジャワ島の森林から密猟されたものと見られています。
あくまで商品として粗雑に扱われているため、脱水症状を起こしており、また牙がすべて折られていました。
スローロリスは牙をもっており、身を守るために咬みつく習性があります。
哺乳動物には珍しくこの牙には毒が含まれていて、人が噛まれると肌がひどく腫れるそうです。
密売業者たちはこのスローロリスを野生の森林から密猟し、牙を抜き取って「安全な商品」になるよう「加工」してから、闇市場で取引をしているのです。
【森林に戻れないスローロリスたち】
救助されたスローロリスは、ジャワ島にある「霊長類救護リハビリセンター」で獣医師たちによる手当てを受けています。
しかしすでに牙を折られてしまっているスローロリスをもとの森林に返す望みは、極めて薄いと見られています。
牙がないため、エサとなる昆虫をとらえることができないのです。
また牙は天敵から身を守る護身用にも使われるものですが、牙がないスローロリスは簡単に餌食となってしまう可能性が高いのです。
現在リハビリセンターで世話をされているスローロリスの中には、妊娠しているものもいるそうです。
このスローロリスに元気な赤ちゃんを産んでもらい、健康に育ったら、ぜひ森に帰って自然の中で暮らしてもらいたいものです。
【YouTube動画が無責任なペットブームを引き起こす】
YouTubeに投稿され人気となったスローロリスの動画が、この小動物のペットブームに火をつけたと考えられています。
この動画では、スローロリスがくすぐられて身悶えている様子が映されており、人から見るととても可愛らしく、楽しんでいるように見えます。
しかし上記のリハビリセンターでは、こういった動画が無責任なペット人気に拍車をかけているとして、2015年から「Tickling Is Torture」(くすぐることは虐待)というキャンペーンを開始し、スローロリスのペット人気の裏にある残酷な違法取引への意識を高めるための活動をしています。
(REVEALED: Ultra cute slow loris being TICKLED into extinction)