イギリス警察「野生動物犯罪ユニット」 2016年4月以降も継続することが決定
イギリスの警察には「野生動物犯罪ユニット」というグループがあります。
文字通り野生動物に関わる犯罪の捜査に特化した専門部隊です。
イギリスの環境省、税関などから15名の専門家が派遣され、35,000件のデータベースに基づき年間約200件におよぶ案件を調査・分析しています。
存続の危ぶまれる希少な鳥類の卵の窃盗、猛禽類の殺害、はく製の製造と販売、シカの密猟、絶滅危惧種に指定されている爬虫類・鳥類の密輸、象牙の取引、さらには野ウサギ狩り(猟犬をけしかけて野ウサギを追い詰め、最終的には野ウサギをイヌに食い殺させる“スポーツ”)など、野生動物を対象とした行為を取り締まる活動を続けてきました。
設立されたのは2006年。当初10年間の活動のみ想定されていたようで、2016年3月までの継続は決まっていました。
しかし2015年11月に政府が発表した予算見直し案には、この専門部隊への歳出額が明記されていなかったため、2016年3月いっぱいで部隊が解散される可能性がささやかれていました。
【向こう4年間の継続が決定】
このたびイギリス政府はこのユニットに資金を再投入することを決定し、継続を確定しました。
環境大臣のロリー・スチュワートは、今後4年分の資金投入を発表しました。
「野生動物を巡る犯罪捜査について、この部隊の国内・国外での今までの貢献にかんがみ、イギリス環境省および入国管理局は、1年間で136,000ポンドを今後4年間にわたって投入することを決定しました」
「この資金投入により、野生動物犯罪ユニットの財政が安定し、少なくとも2020年まではその重要な任務を遂行することが可能になるのです」
【ネット上でも行われている野生動物の違法取引】
推定によると野生動物の違法取引は、世界で年間100~200億ドルに相当する規模で行われていると見られています。
これは「薬物取引」「違法労働者」「武器の密輸」に続き世界第4位の規模の闇市場となっています。
そしてこれらの犯罪は組織的に行われているものがほとんどです。
(密輸された象牙で作られたゾウの人形)
またスチュワート環境大臣は、ネット上で行われている野生動物関連犯罪についても、1年間で29,000ポンドを今後4年間にわたり拠出することを発表しています。
野生動物に関する犯罪は、ネット上で増加しているという現状があるのです。
【野生動物は後回し?イギリス政府による直前の決定】
野党なども、政府の今回の決定を大方評価しています。
その一方で、直前になって急に資金再投入の決定がなされるなど、政府の段取りの悪さを批判する声もあるようです。
イギリスの現政権は2014年2月にも野生動物の違法取引についての国際協議会を首都のロンドンで開催し、世界から46か国が参加する大規模な話し合いを取りまとめるなど、野生動物保護について国際的な仕事を実行してきた経緯があります。
その一方で、もし2016年3月いっぱいで野生動物犯罪ユニットを解散するようでは、おひざ元であるイギリス国内の取り締まりを中途半端に終わらせることになる、と批判が高まっていました。
イギリスではこのユニット継続を訴える署名が7,000件以上も寄せられており、国民が高い関心を持っていたことが分かります。
(UK's wildlife crime unit wins late reprieve from closure)