ビーバーのダムは洪水を防止 汚染物質除去にも貢献
2015年7月、スコットランドで大規模な洪水が起きました。
約100戸が避難を余儀なくされ、広い地域で停電が発生、一部では自動車まで水に流されるほどの大きな洪水でした。
被害にあった住人たちは、この洪水の原因はビーバーがつくるダムに違いないと考えていました。
洪水で上流から流されて来た枝などに、動物のかみついた痕跡があったためです。
しかし専門家たちは、原因はビーバーではない、あくまで大雨による河の上流での水量増加が原因だった、と反論しました。
その後、この地域のビーバーがつくるダムとその影響について調査が進められてきました。
【ダムのおかげで洪水防止】
この調査により分かったことは、ビーバーの生息する水流では洪水が起きにくい、もしくはその害が小さくなるということでした。
ビーバーのダムはスポンジのような役割を果たしており、水をいったん吸い込んで堰き止めて、それを徐々に下流に流す働きをします。
一方、ダムがないところは、何の障害もなく水が流れ続けるため、必然的に流れが速く強くなってしまうのです。
つまり、ビーバーのダムは洪水を助長してしまうことはなく、むしろ洪水の防止に一役買っている可能性が高い、という結論になりました。
【汚染物質の除去にも貢献】
さらにビーバーのダムは、その土地の生態系改善に貢献し、農業汚水を減らすなど、予想されていなかった効果までもたらしてくれていることが分かりました。
研究チームはビーバーが生息している場所にある農場と、生息が確認されていない場所にある農場を比較しました。
その結果、ビーバーが生息している場所にある農場のほうが、有機物質が7倍、水生植物が20倍多く発見されたのです。
周辺に生息する生き物の種類も28%多くなっていました。
さらに農薬などの有害物質についても、リン化合物が50%、硝酸化合物が43%少ないなど、ビーバーのダムが汚染物質除去にも貢献していることが判明したのです。
【農業重視を訴える農業関係者】
専門家は「ビーバーのダムは生態系を活性化してくれるため、地域の環境に自然特有のメカニズムを取り戻してくれるであろう」と述べています。
その一方で、地元の土地利用や、河の下流で行われる漁業などへ影響も考慮に入れる必要がある、とも語っています。
現地の農業組合の担当者は「地域の環境保全は、農場や森林などへの被害と比較して検討されるべき」であると述べ、今回の調査結果だけを見て判断せずに、ビーバーの存在がもたらす農業全体への影響を考慮に入れるようメッセージを発しています。
(Beavers blamed for flash floods in Scotland may actually control problem)