目の不自由な子牛 食肉として売却が決定するも屠殺を免れる

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この子牛は生まれつき白内障を患っていて、わずかな光と形を認識できるだけの状態で生まれてきました。

 

一緒に写っている少女はアメリカ・テキサス州の酪農家の娘さんで、子牛を自宅の牧場で今まで大事に育ててきました。

 

しかし畜産業を営んでいる以上、この子牛も最終的には肉牛として売却されてしまう運命にある、その他多くの牛の1頭にすぎませんでした。

 

 

【8,000ドルで売却決定】

2月のはじめ、テキサス州のフォートワースで行われた家畜展覧会に出品されたこの子牛は、8,000ドルで買い手が決定しました。

 

この子牛を育ててきた少女にとっては、殺されるために自分のもとを去ってゆく子牛を見送るのはとてもつらいことでした。

 

家畜展覧会で行われたオークションには少女も立ち会い、最愛の子牛に最後の別れをしました。

 

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【写真がネットで広まる】

その後この写真はネットに投稿され、白内障の子牛を育てた少女の話として知られるようになりました。

 

投稿したのは、家畜たちの待遇改善や残酷な屠殺の廃止を訴えている動物愛護団体です。

 

テキサスの酪農家たちは、家畜を食肉として売ることで子供たちの学費を稼いでいるという事実、そして肉を食べるということの前には、動物を殺すというプロセスがあるという事実を知ってもらう目的で投稿した、と語っています。

 

しかし短期間のうちに、この写真とエピソードは広くシェアされ始めました。

 

そしてこの愛護団体に多くの問い合わせがあり、子牛を救い出すにはどうしたらいいか、という質問が多く寄せられたのです。

 

この団体ではどうにもできないことのため、家畜展覧会の主催者へ人々の声が伝わるように取り計らいました。

 

しかし状況の変化には結びつきませんでした。

 

この子牛を買い取った会社は「展覧会に出品され売却された牛はすべて屠殺場へ運ばれて食肉として処理されることが契約で決まっている。法的拘束力がある以上、今さらその手続きを変えることはできない」と突き放していました。

 

地元テキサスの畜産業界からも「育ててきた家畜を手放すのは誰にとっても辛いことだ。しかし酪農家である以上はこの辛さに耐える必要があり、この少女にとっては通過しなければいけない過程なのだ」という厳しい声も上がっていました。

 

 

【特例により屠殺を免れる】

しかし、この子牛が白内障を患っているにもかかわらず少女が心を込めて育て上げた、という事実を知った展覧会主催者は、あらためてこの子牛の処遇について検討することになったのです。

 

その結果、州の獣医師たちから、この子牛の眼の状態を調査し牛の白内障研究に活かしたいという声が寄せられました。

 

そして数日後、この子牛は屠殺場へ運ばれる代わりに、テキサスA&M大学獣医学部へ生体見本として寄付されることに決定したのです。

 

 

【賛否両論あり】

家畜展覧会主催者のこの判断には、賛否両論があるようです。

 

動物愛護の観点からは、温かい対応に高い評価が寄せられており、ネットでもその結果を喜ぶ声が多く挙がっています。

 

しかしその一方で、食肉用の家畜とペットとを混同することは、畜産業の原則とそぐわない、という意見も出てきています。

 

アメリカでは食肉が主食である以上、動物愛護を最優先することが常に正しいとは限らない、というのが畜産業者たちの主張のようです。

 

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