トルコの保護犬たち 人気のあるアメリカで受け入れられる

日本でも一部で報道されましたが、トルコの街中で飢えと寒さに苦しんでいるゴールデンレトリバーの一行が、里親探しのためアメリカに送られました。

 

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【保護された野良犬たち】

トルコの首都イスタンブール近郊に住むヤスミンさんは、過去10年間に渡り、イスタンブールの街中や森林から野良犬を救助し、里親を探してあげることを自分の使命としてきました。

 

「犬たちは話すことができません。もちろん盗みなどはしません。ただ単に食べ物と飼い主の愛情を必要としているだけなのです」。

 

今から10年前、初めてイヌの保護センターを訪れたヤスミンさんは、そこで多くのイヌが鳥かごのような小さなケージに入れられ、コンクリートの冷たい床に置かれているのを目撃しました。

 

それを見たヤスミンさんは涙がこみ上げてきた、と語っています。

 

「保護センターを出たときには泣いていました。その後もう一度訪れましたが、やはり涙をこらえることができなかったのです」

 

そして「泣いているだけではだめだ」と考えたヤスミンさんは、その保護センターでボランティアとして働き始めました。

 

 

【大人になると捨てられるゴールデンレトリバー

その後トルコでは、ゴールデンレトリバーの人気が高まりました。

 

しかし正確には「ゴールデンレトリバーの子犬の人気が高まった」と言うべきでしょう。

 

ヤスミンさんの働く保護シェルターの担当者は「あれは悲劇的な出来事だった」と語ります。

 

「人々はペットショップで可愛い子犬のゴールデンレトリバーを購入するのですが、飼い始めてだんだん大きくなると自宅では飼育し続けられなくなるため、路上に置き去りにしたり、森まで運んで捨ててきたりするのです」

 

ゴールデンレトリバーはほかのイヌに比べて、屋外で生き延びる能力が低いといわれています。

 

ほかのイヌであれば路上をさまよいながら食べ物を見つけることができるところ、ゴールデンレトリバーにはそれが難しいため、寒さの中ひもじい思いをして苦しまなければいけないのです。

 

ゴールデンレトリバーは屋内飼育に適したイヌです。とても穏やかな性格のため、ほかの生き物を襲ってエサを獲得したりしません」

 

 

【里親希望者が待ち続けるアメリカ】

ある日、ヤスミンさんはアメリカ人の知人から、ゴールデンレトリバーはアメリカでとても人気のあるイヌであることを聞かされました。

 

「アメリカではゴールデンレトリバーの数よりも里親希望者の数のほうが多いため、希望者は長いあいだ待たされた挙句、場合によっては里親になれない人もいるくらいだ、と言うのです」

 

そして今回、アトランタ州にあるイヌの保護シェルターと手を結び、合計123匹のゴールデンレトリバーがトルコから運ばれることになりました。

 

アメリカ側の保護シェルター担当者は「受け入れた全てのイヌについて責任をもって面倒を見ます」と語っています。

 

「ジョージアでも、カリフォルニアでも、ニューヨークでも、(里親希望者が)どこにいてもかまいません。一匹もケージの中で死なせるようなことはしません」

 

 

【路上で暮らす多くのイヌとイスタンブールの人々】

一方トルコでは、イヌたちの惨状を理解しない人たちが心無いうわさを広めている、という悲しい事実もあります。

 

「彼らは、今回のゴールデンレトリバーたちは動物実験の材料としてアメリカに送られた、などというひどいうわさを流しているのです」。

 

しかしこれは単なる嫌がらせというだけでなく、歴史的な背景もあるようです。

 

トルコの首都イスタンブールは、過去に何度も外国から侵略されてきた経緯があり、そのため不安定になった市内では、野良犬の数もおのずと増え続けてきました。

 

しかしトルコの人たちは、そんな野良犬たちと共生しながら現在のイスタンブールを作ってきたのです。

 

今では、街中のカフェでコーヒーをすするおじさんの横に野良犬が座り込み、おじさんからスナックのかけらを頂戴してムシャムシャ食べている、という光景はイスタンブールでは良く見かけるものです。

 

里親探しのためにアメリカへイヌを送ったことへの批判は、このように野良犬とともに暮らしてきたイスタンブールの歴史的・文化的背景も理由になっているようです。

 

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【それでも改善が求められるイヌの惨状】

しかし、イヌたちには身を寄せる場所もなく、食べ物も安定して得られない状態であることは事実です。

 

特に、ゴールデンレトリバーのように家庭で飼育される種類のイヌにとっては、苦しい状態で生活していることに変わりはないのです。

 

「今回アメリカに送られたゴールデンレトリバーのうち40%は、歯が折れて口内の神経が露出してしまっている」と、トルコの保護センターの担当者は語っています。

 

「一見元気そうに見えるイヌも、検査をしてみると病気だったりケガをしていたり、とても健康とはいえない状態なのです」。

 

今回の共同作業では、去勢手術やマイクロチップ装着などをトルコで行い、いったんアメリカに到着してから必要な治療を施す、という分担で行うことになりました。

 

またこの123匹の話は広く知られるようになり、その後追加で数十匹が運ばれています。

 

今まですでに200匹を超えるゴールデンレトリバーがアメリカに到着し、里親探しをしているところです。

 

しかしトルコの保護センターでは、今でも保護されて運ばれてくる野良犬が後を絶たず、またゴールデンレトリバー以外のイヌについても、里親探しが懸命に続けられているのです。

 

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How Istanbul's street dogs end up in America - CNN.com)