ホッキョクグマに首輪 首を絞められ出血も?

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この写真の左側のホッキョクグマには首輪がつけられており、その周りは血に染まって赤くなっているように見えます。

 

10月にこの写真がツイッターに投稿されると、首輪がホッキョクグマの首に食い込んで苦しませているのではないか、という懸念の声がネット上で多数あげられ、首輪を外すことを求める署名運動まで起きました。

 

 

【機能していないGPS

アルバータ大学生物学部のデローチャー教授は、この話題となっているホッキョクグマを調査対象としている学者で、ホッキョクグマが氷河とどのように折り合って暮らしているかを調査し、ホッキョクグマの将来の生息数について研究しています。

 

実はこの首輪は1年ほど前に装着されていましたが、ホッキョクグマの行動をGPSでトラッキングすることに失敗していました。

 

またこの首輪は時間が経てば自然とはずれる仕組みになっているはずでしたが、それも機能していないようで、今は本来の役目も果たさないまま、ただ首にくっついているだけなのです。

 

動物保護の専門家たちにとっても、この季節の北極は危険が大きく、簡単には救助に向かうことができません。

 

冬が訪れ、すでに北極地域は海が凍り始めてきており、目当てのホッキョクグマのいる場所に人が近づくことが難しくなっています。

 

また、問題のホッキョクグマの住むアラスカでは、冬になると夜のような日の出ない状態が24時間にわたり続くため、今の時期は危険すぎて人が現地に近づけなくなっているのです。

 

 

【教授の反論】

このような経緯で、主にSNS上で非難をあびてきたデローチャー教授は、以下のように反論しています。

 

「このホッキョクグマが傷を負っているかどうかは分からない。

赤く見えるのが血であったとしても、これがホッキョクグマ自身の血であるとは断定できない。

この時期になると、ホッキョクグマたちはクジラの死骸に群がってその肉を食べるが、そのときには当然クジラの血が顔の周りについてしまい、とくに首の回りは頭部のほかの部分に比べて汚れが落ちにくい場所である」

 

「首輪が食い込んでいるように見えるが、ホッキョクグマは極寒を生き延びるために体毛が4~5㎝と長いため、実際の首回りは深いところにある」

 

WWF世界自然保護基金)の専門家によると「動物が首輪をされただけで傷を負うということはめったに起きないだろう」とのことです。

 

デローチャー教授は、気候変動のせいで生息場所を失い続けているホッキョクグマの保護というのが自分の研究の動機なのであり、特定の動物を傷つけることを望んだことなど一度もない、と主張しています。

 

また、もし本当に首輪が邪魔になれば、ホッキョクグマは自分で首輪を外せるはずだ、とも述べています。

 

最近はこの首輪をしたホッキョクグマの目撃情報が出てきいないため、「すでに自分で取り外した可能性もある」とも語っています。

 

「動物に関する調査を行う際は、動物に対する危険をぬぐえない部分があり、人にはどうにもできないこともある。確かなことは、我々の最終目標は動物の保護である、ということだ」

 

 

【それでも心配】

デローチャー教授の所属するアルバータ大学も「首輪には時間とともに腐敗してゆく金属が使われており、いずれはこの首輪は自然と剥がれ落ちるはずである」

 

「同じ日に撮影されたこのホッキョクグマの写真があり、その写真ではエサを食べている様子がみられた。エサを食べているのであれば、首が締め付けられているということは考えられない」

 

というコメントを発表しています。

 

しかし、写真のホッキョクグマがオスであった場合、これからの季節は体重が増加しカラダも大きくなるため、首周りがますます太くなる可能性があります。

 

もし首輪がまだ残っていたとしたら、これから首を締め付けてしまうことが十分にありえるため、安心はできないでしょう。

 

Is this polar bear really being choked by a research collar? | Globalnews.ca

Polar bear injured by radio collar part of U of A study, Environment Canada says - Manitoba - CBC News