ジンバブエで相次ぐゾウの毒殺 やはり象牙目的か
2015年10月、ジンバブエの国立公園では毎週のようにゾウの死体が発見されています。
10月の第1週には14頭の死体が発見され、続いて月半ばに26頭の死体、さらに月末には22頭の死体が発見されました。
10月だけで合計62頭のゾウが、不自然な死に方で命を落としています。
【密猟のための毒殺】
これらのゾウの肝臓や腎臓を調べてみると、猛毒のシアン化物が検出されました。
今まで判明しているところによると、公園内のゾウが生息する地域では、シアン化物が注入されたオレンジやソルトリック(塩分の豊富な地面で、ゾウはその地表を舐めて塩分を摂取する)が発見されています。
一部のゾウからは牙が切り取られており、象牙を目的とした密猟であると見られています。
【同時に起こる象牙の密輸】
このゾウの死体の大量発見と同じタイミングで、10月にはいくつかの象牙密輸未遂が発覚し、逮捕者が出ています。
ある件では、ジンバブエから南アフリカ共和国へ25kg(約6,300ドル相当)の象牙を密輸した容疑で、ジンバブエ人が逮捕されています。
また、ジンバブエの空港で173kgの象牙が発見された事件もありました。
金額にして約43,000ドル相当のこの象牙は、シンガポールに向けて密輸されるところで、ジンバブエ人3人とマリ人1人が密輸容疑で逮捕されています。
【犯人は特定されず】
現地の警察によると「ゾウの密猟は相変わらず行われており、日に日に増えているようにも見える。今回のようにシアン化物による毒殺に加え、銃火器を使って殺害しているものもいる」という状況が続いているようです。
犯人の発見につながる情報には400ドルの懸賞金がかけられています。
現在、南アフリカから訓練を受けた警察犬が呼び寄せられ、犯人の捜査に協力しています。
またドローンも配備し、国立公園のモニタリングに力を入れているということです。
【2013年にも同様の毒殺事件】
2013年にも、多数のゾウが同じジンバブエの国立公園で殺害されました。
最終的に発見された死体の数は200~300頭といわれています。
このときもやはりシアン化物による毒殺でした。
さらには、このシアン化物中毒で死亡したゾウの死骸をついばんだハゲタカも大量死してしまったのです。
今回のゾウの毒殺でも前回同様の害がハゲタカに及ぶことが予想され、心配は募る一方です。
シアン化物は、ジンバブエでは鉱物の発掘で頻繁に使われるため、比較的入手しやすい化学物質なのです。
【ジンバブエが主張する 密猟が耐えない「理由」とは】
アフリカ諸国の中でもジンバブエは特にゾウの生息数が多く、合計で10万頭が生息しているといわれています。
今回事件の起きた国立公園では、そのうちの4万頭が暮らしています。
ジンバブエで今回のような密猟が絶えない理由として、ジンバブエの環境大臣は「アメリカの方針変更」を指摘しています。
「アメリカ合衆国がゾウのスポーツ・ハンティング(撃ち殺すことを目的とした趣味のハンティング)を禁止してしまったのです。アメリカから来たハンターたちは、国立公園にハンティング料金12万ドルを支払ってくれていました。しかし今、単にバスに乗ってゾウを見せるだけではわずか10ドルしか料金を取れません」
「ゾウの保護のためには、スポーツ・ハンティングからの観光収益が必要なのです。今回のような密猟が起こってしまうのは、アメリカの政策のせいなのです」
問題を抱える国の当事者の発言としては、とても無責任に聞こえます。
しかし同時に、ゾウの保護のためにはお金が必要であり、それがジンバブエという国の経済状況にとっては優先順位が低くなってしまうという事実は、私たちも知っておくべきかもしれません。