ネコ写真のパイオニア キャリア集大成の写真集出版
ネット上ではネコが大人気です。
これは日本だけではなく世界各国で人気が高いようで、「cat」という言葉はつねにグーグルの検索ワード・ランキングでも上位を占めています。
【ネコ人気の火付け役は?】
これほどネコ画像や動画が人気になったのは、いつからでしょうか?
ネットの時代が始まる前からネコ写真は人気があり、その「火付け役」としてウォルター・シャンドーハ(またはチャンドーハ)というフリーランスの写真家が知られています。
ウォルターのキャリアは70年以上に及び、現在まで続くネコ写真のスタンダードを作り上げた人物といえるでしょう。
【ネコ写真の始まり】
ある冬の日のニューヨークで、ウォルターは一匹の灰色の子ネコが雪の中でニャアニャアと鳴いているのに出会いました。
彼はその子猫を拾い上げ、家につれて帰りました。
「ロコ」と名づけられたそのネコは、家の中でウォルターを追いかけ、おもちゃで遊び、鏡に映る自分の姿に驚いたり…と可愛らしい魅力を振りまきました。
それを見ていたウォルターは、カメラを手に取り写真を撮り始めたのです。
写真の出来栄えが気に入った彼は、ニューヨークで開かれた写真コンテストなどにロコの写真を出展しました。
こうしてロコの人気が広まっていったのです。
もちろんネットどころかテレビすら普及していない1940年代の話です。
【「ネコ写真家」としての名声】
その後、カラー写真が普及し始めた頃になると、ウォルターはネコをモデルにした写真撮影のプロとして飼い主たちの間で知られるようになりました。
1951年には、ウォルターの撮影した可愛らしい子猫の写真が「Woman’s Home Companion」という雑誌の表紙を飾りました。
こうして、ウォルターの撮影した写真が今日の「ネコ写真」のスタンダードを作り上げていったのです。
彼の写真はキャットフードからジグソーパズル、さらにはパン屋の広告にまで使われるようになりました。
また彼は、撮影のためにネコを手なずけるコツを伝授するハウツー本や、自身の詩をネコ写真と合わせて載せた本などを数多く出版しています。
【94歳。現役のネコ写真家】
ウォルターによると、ネコ写真を成功させた秘訣のひとつとして、「光の当て方」をあげています。
背景に2種類、前景に2種類、さらに逆光で2種類、計6種類の光を使います。
光を満遍なく明るく当ててあげるだけで、毛の先まで光が当たり、ネコは可愛く写るようになるのです。
ウォルターは自宅を仕事場として使用していて、納屋を改造したスタジオで家族たちとともに撮影に励んできました。
ネコにポーズの指示を出すことはできないのです。
ネコの飼い主なら分かるでしょうが、私たちは本当の意味でネコを飼うことはできない。
むしろ、ネコが私たちをコントロールしてしまいます。
ネコたちは自分たちの好きなように生きる動物なのです。
とウォルターは語っています。
ウォルターは現在94歳。いまでも現役で活躍中です。
今から70年以上前に私が写真を始めた頃は、重たい金属で出来たカメラにフィルムを入れて持ち歩いたものでした。
失敗なく撮影できるよう、カメラの使い方を熟知していなければいけませんでした。
フィルムはとても高価だったので、無駄に使うことができなかったのです。
しかし、彼は決して“スマホ+インスタグラム”で楽にネコ写真が撮れる現代の風潮について苦言を呈しているのではありません。
インターネットのおかげで、飼い主たちはみな自分の好きな動物への愛情をシェアできるようになったのです。
このたび、ウォルターのネコ写真の集大成ともいえる写真集『Walter Chandoha: The Cat Photographer』が出版されます。
(※現在は英語版のみで、日本語版の予定は発表されていません。)