ライオンだけではない アフリカで横行する「ゾウのハンティング」
ライオンのセシルが殺害されたニュースが世界中を駆け巡ったとき、同じくゾウの「トロフィーハンティング」(趣味で行われる狩猟)も人気のビジネスとなっている、という事実に驚いた人も多かったことでしょう。
アフリカを訪れる趣味のハンターたちにとってゾウは、ライオン、ヒョウ、サイ、バッファローと並び「5大獲物」として“人気”があると言われています。
アフリカのシンリンゾウは絶滅の危機に瀕していますが、やはりこのトロフィーハンティングの対象になっています。
実際、アフリカの旅行業者たちはアフリカゾウのハンティングを大々的に宣伝材料に使っているのです。
そしてハンターたちは、この“楽しみ”のためにお金を払ってハンティングを行い、ビジネスを成立させているのです。
アジアゾウ(インドゾウ)は1976年、アメリカの「絶滅危惧種保護法」に登録され、1975年には「絶滅危惧種の国際取引に関する会議」で「世界的な保護が最も必要な動物」に指定されています。
同じくアフリカゾウも1978年、アメリカの「絶滅危惧種保護法」に登録され、1990年には「絶滅危惧種の国際取引に関する会議」の「世界的な保護が最も必要な動物」に指定されました。
しかしその後、ボツワナ、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエに生息するゾウについては「保護が最も必要」ではなく、それよりひとつ低いカテゴリーに含まれてしまいました。
また、アメリカの絶滅危惧種保護法に指定されたアフリカゾウについては、新しくシンリンゾウが新種として認められた後も、その法的な指定はアップデートされていません。
そのほかの国々の法律でもゾウは保護対象に指定されています。
それにもかかわらず、アフリカの国のいくつかでは、ゾウの狩猟を認めるのみならず奨励もしているのです。
この背景には、いわゆる「トロフィー・ハンティング料」と呼ばれる手数料を徴収できるという事情があります。
ゾウと共生しなければいけない地域の人たちの言い分としては、「絶滅危惧種に指定されているゾウが地域にいるせいで、自分たちはこの動物を守る義務を負っている。そのために金が必要だから、ゾウのハンティングを収入源にするのだ」ということです。
表向きは、このハンティング料はゾウの安全や生息地域の保全のために使われることになっているのです。
しかし実態はそのとおりに進んでいません。
アメリカやヨーロッパなどから訪れるハンターたちから徴収したハンティング料は、生き残っているゾウの保護のために地域で活用されるのではなく、役人たちのポケットに納まってしまうのが実情なのです。