自分で食べるものの産地を気にしない人たちがいますが、ペットフードについてはなおさら考えようとしないものです。また、自分のペットに与えているエサに何が含まれているか良く分かっていない人も多くいます。
ペットフードは人の食べ物を作る過程で出された残り物で作られています。例えば心臓など、あまり人の食用に使われない臓物がその原材料となっているのです。
人の食べ物を作る過程で出される残り物、と言うことは、人の食べ物としてのスタンダードを満たした材料ということになりますので、その意味では、ペットのエサとしても問題とはならないように見えてきます。
しかし問題なのは、人の食べ物のスタンダードは、必ずしも動物福祉の観点から見るとしかるべきスタンダードには達していない、という事実なのです。
乳牛の場合、飼料でのみ飼育されていて、草を食べることなく一年中飼育小屋に入れられたままです。メス豚は小さな分娩用の木枠の中に入れられ、まったく身動きできない状態で飼われています。若鶏は小さな箱に押し込まれ、エサあさりや砂浴びなどの自然の動きが出来ないのです。
このような畜産業の動物たちがおかれている状況と、その動物をエサとするペットが暮らしている豊かな家とのミスマッチは、異常なものです。
一部では、「動物愛好家」になることそのものが問題と言う意見もあります。
例えば獣医たちの場合、動物愛好家だと動物に対して感情的になってしまため、むしろ「動物に関心がある」状態でいるほうが望ましいと考えている人もいます。
上記の通り、ペットフードは人の食べ物の製造過程で出た残り物から作られています。もし人の食べ物がフリーレンジ(放し飼い)の食用家畜から製造されていれば、ペットフードも同じくフリーレンジとなります。
現状では、フリーレンジの食用家畜は人の食卓にも提供されていますが、それほど普及していません。ペットのエサまでもフリーレンジにするのは事実上採算が取れないのが現実です。
ペットフード業者は、人の食べ物を製造している食品業者に対して、動物愛護を意識した家畜の飼育をするようにプレッシャーをかけるべきだ、と唱える人もいます。
しかし同時に、残念ながらペットフード業界は、食品業界にプレッシャーをかけるほど大きくないのも現実なのです。「まるでスクラップメタルの業者が自動車業界にプレッシャーをかけようとするようなものだ」という反論が返ってくるのです。
大きな変化をもたらすには、食品業者とペットフード業者が協力する必要があります。
あるハンバーガーチェーンの幹部は、フリーレンジの鶏肉を使わない理由として、売上の上昇が望めないこと、そしてそのシステム作りの困難さを挙げていました。
お客さんは胸肉を求めるため、高いフリーレンジの鶏肉から胸肉をのぞいた部分が店のキッチンに残ってしまう、という結果に陥るわけです。この残った鶏肉をどうすればいいのでしょうか?
もしペットフード業界がこれに注目すれば、フリーレンジの鶏肉を元にしたペットフードの材料として使われることになります。
しかし、ペットフード業界がこれに取り掛かるためには、やはりペットフードを買うお客さんたちがフリーレンジのペットフードを買い求めなくてはいけません。需要がなければ供給も望めないのです。
ペットオーナーで、本当に動物愛護の精神を持っている人は、現状を認識し、もっとフリーレンジのペットフードへの関心を高めるべきなのです。
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