ブラジルのジャガー 海まで行き魚を捕っていることが判明
ブラジルに「マラカ島」という島があり、そこには生態系の保護区として指定されている大規模な場所があります。
ここに暮らしている野生のジャガーが、きわめて珍しいエサの取り方をしていることが発見されました。
海まで出かけてゆき、魚を捕っているのです。
世界自然保護基金(WWF)の調査隊が3頭のジャガーに首輪をつけ、70台の定点カメラを設置して観察を続けてきました。
これまでも、ジャガーが湿地帯の中で魚を捕まえているところはすでに目撃されたことがあります。 またこの島の周りで漁業を営んでいる人たちが、ジャガーが海の中を泳いでいる様子を目撃した、という情報は寄せられていました。
しかし専門家の観察によって海に出かけて魚を捕っているのが確認されたのは、初めてでした。
さらにこの海で魚を捕るという行動が、どうやらジャガーたちの日々の狩猟の大きな割合を占めている可能性がある、ということも今回注目されている点です。
いわゆる「絶滅危惧種」ではないが生息数は減少
国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト上ではジャガーは「準絶滅危惧」という分類になっており、いわゆる絶滅危惧種というものではありません。
しかし「準絶滅危惧」というのは、今は絶滅の危機に瀕してはいないものの、生息地の変化などがあれば絶滅危惧種になる可能性のある動物です。
実際、森林伐採や毛皮目的の密猟が原因でジャガーの生息数は激減しています。
とくにこのアマゾンでは、2019年に発生した大火災が原因で、500頭のジャガーが暮らす生息地が失われたと見積もられています。
他にもブラジル本土では、バッファローを家畜として酪農を営んでいる農家が多くいます。
ジャガーは農家の近くに現れ家畜であるバッファローを襲ってしまうことも多くあるため、こうした農家とジャガーとの衝突も大きな問題になっています。
マラカ島のジャガーはわずかながら生息数が多い
WWFがマラカ島に設置した定点カメラは、これまでに3万を超える写真を撮影してきました。
また3頭のジャガーにつけられた首輪のGPS装置と衛星データとの連携で、ジャガーたちが熱帯雨林でどのような生活をしているのかを時間単位でアップデートできるようになっています。
このマラカ島には人は暮らしていません。外部の人との接触は事実上ほとんどない完全な自然です。
この島に暮らすジャガーはわずか27頭ですが、島の面積に対するジャガーの頭数という比率で言うと、若干生息密度が高いことが分かっています。
おそらくそれが原因で、エサを獲る場所を海にまで求めていると考えられています。
このように島の中の頭数がわずかながら多めである一方、ブラジル本土の頭数は減少しているのが実情です。
そこで研究者たちは、このマラカ島で暮らしているジャガーの血液サンプルをとり、ブラジル本土で暮らしているジャガーとの交配が可能かどうかの確認もする予定です。
ジャガーの適応能力が高い証拠
アマゾンに限らず、野生動物は地球上の至るところで生息地の減少という危険に直面しています。
こうした中、ジャガーも同じ問題に直面していながら、それまでにはなかった行動でエサを獲っているということは、この動物が環境の変化に適応できる能力が高いことを証明していると見られています。
もちろん、この観察結果だけで満足することはできません。
たとえば、ジャガーが海辺へ出て来て魚を捕るという行動が、果たして過去どれくらいの期間にわたって行われてきたのかについては、まだ調査が必要です。
2020年にはカメラの台数を増やし、6月には首輪をさらに2頭のジャガーにも装着する予定です。
こうして蓄積されたデータをもとに、ジャガーたちが熱帯雨林の中でどのように暮らし繁栄しているのか、さらに深く解明していけると期待されています。
そしてジャガーとその縄張りについてより理解を深めることで、人間との接触の可能性を出来る限り少なくできるよう研究が進められていくのです。