アメリカで動物虐待を刑法上の犯罪行為とする法案が下院を通過　超党派の議員で法案提出

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アメリカ合衆国で、動物虐待を犯罪行為として扱う法律「Preventing Animal Cruelty and Torture Act」（動物への残虐・虐待行為を禁ずる法律、通称「PACT」）が全会一致で下院を通過しました。

今後上院を通過し可決・施行されれば、火傷させる、溺れさせる、窒息させるなどの意識的な虐待行為によって動物に大きな害を与えた場合、重罪として扱われます。

有罪の場合は罰金または最長7年間の禁固刑となる可能性があります。

動物虐待行為が合衆国レベルで初めて禁止される

このニュースを聞いて意外に感じるのは、アメリカで動物虐待を禁じる法律が今まで存在しなかった、という事実です。

合衆国全体ではなく各州レベルでは、動物虐待を禁ずる規定がすでに設けられていました。

しかし、たとえば複数の州をまたいで行われた虐待行為や、空港・軍事基地といった合衆国だけが権限を持っている場所には適用されなかったものも多くありました。

実はアメリカ人でさえも、自分の国で動物虐待行為そのものが刑罰の対象にはなっていないということを知らない人も多く、今回の法案が下院を通過したというニュースを聞いて初めてその事実を知った人もいたそうです。

おぞましい動画がネット上で拡散された10年前

今から10年ほど前。動画を撮影して、それをネット上でシェアすることが流行り出したころのことです。

視聴者の注目を浴びようというだけの目的で、靴で小さな動物を踏み殺す動画が撮影され、これがネット上で横行するという異常な事態になったことがありました。

「animal crushing」と呼ばれていたこの動画は、「crush」（つぶす）という行為以外にも、熱湯に入れて大やけどを負わせたり、生きたまま引き裂くなど、想像するだけでも耐えられないような行為がどんどんとエスカレートしていきました。

このような動画がネット上で拡散されていたということは、ある特定の場所だけで行われているのではなく、誰でも見れるようになっていたことになります。

この状況に対しては州レベルではなく合衆国レベルで対応する必要があることから、2010年に動物虐待を撮影した動画投稿を禁ずる法律が制定されました。

これは一つの大きな前進ではありましたが、肝心の虐待行為そのものに対する明確な厳罰は2010年の時点では定められていませんでした。

それから10年ほどたった今年。下院を通過した今回の法案「PACT」によって、録画・投稿していなくても、動物に対する虐待行為におよんだ場合は重罪として扱われることになります。

まだ議論されるべきことがある

今回のPACTという法案はあくまで動物虐待を対象としたものです。

たとえば、以下のような場合に行われる動物殺害は対象となっていません。

・回復の見込みのない行基に苦しむ動物の安楽死

・食用目的で命を奪うこと

・娯楽目的の狩猟、ワナの設置、魚釣り

・医療などの科学研究目的で犠牲になること

また人の生命や財産を守る目的で動物に危害を加えることも、このPACTの対象になっていません。

以上のことは人が生活する上でやむを得ないものも含まれていると思います。

しかし動物愛護の立場から見ると、やはり「娯楽目的の狩猟」など今後も議論の対象とされるべきものがまだあることが分かります。

党の垣根を超えて行われた法案提出

なお今回の法案は、テッド・ドイチ議員とヴァーン・ブキャナン議員という二人の国会議員の協力で主導されました。

The U.S. House just passed the #PACT Act, legislation that I introduced with my colleague @RepTedDeutch to criminalize animal abuse. This important piece of legislation would make animal cruelty a federal offense. Great news for my fellow animal lovers! pic.twitter.com/fK4qAppXnK
— Rep. Vern Buchanan (@VernBuchanan) October 22, 2019