今度はシマウマ 絶滅危機種を犠牲にして続けられるトロフィーハンティング

主にアメリカやヨーロッパのハンターたちがアフリカに行き、現地に暮らす野生動物たちをライフルで撃ち殺す「トロフィーハンティング」は、現在では世界各国に知られるようになり、多くの人たちが批判しています。

 

とくに2015年7月、ジンバブエでライオンの「セシル」がトロフィーハンターに殺害されたことが報道されると一気に注目されるようになりましたが、相変わらずこの残酷なハンティングは続けられています。

※参照「心無い殺害の対象になった「ライオンのセシル」について - 動物を知り、動物を愛す」。

 

最近では、イギリスのハンターが南アフリカ共和国で自分が殺したシマウマといっしょに撮った写真をフェイスブックに投稿し、当然のことながら方々から批判の声が上がりました。

 

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このハンターははく製の製作者として知られている人だと報道されています。

 

4年前のセシルの場合はその特徴あるたてがみが有名で、生前から人気のあるライオンだったため、殺害されたときには批判の声が世界中で上がったという背景がありました。

 

しかしセシル以外にも名もない数多くの野生動物たちがトロフィーハンターに殺害され続けています。

 

そのほとんどすべてがライオンやキリン、ゾウやサイなど、絶滅危惧種ばかりなのです。

 

 

シマウマも絶滅危機種

今回のシマウマも、やはり絶滅危機種です。

 

「シマウマ」と呼ばれている動物には3種類います。 そのうち「サバンナシマウマ」は近危急種で絶滅危機の1歩手前であり、「ヤマシマウマ」は危急種、「グレビーシマウマ」は絶滅危惧種と、ともに「絶滅危機種」に分類されていて、どの種の生息数もまったく安心できない状態なのです。

 

国際自然保護連合(IUCN)レッドリストによるカテゴリー>

絶滅種

野生絶滅種

絶滅危機種

  • 近絶滅種
  • 絶滅危惧種グレビーシマウマ
  • 危急種←ヤマシマウマ

準危急種

  • 近危急種←サバンナシマウマ
  • 低危険種

 

中でも絶滅危惧種のグレビーシマウマは、1980年代には5,800頭の生存が確認されていましたが、その後の30年のあいだに50%以上減少し、現在の生息数は2,800頭と言われています。

 

グレビーシマウマは、シマウマのみならずウマ科の中で最も体が大きい動物です。 比較的幅広い種類の植物を食べることが出来る動物で、また一つの場所にとどまることなく、食べられる草木を探して移動する性質があります。

 

しかしその一方で、水のある場所から離れられないという弱点もあります。 とくに子供のグレビーシマウマはこの条件のために生存率が高くありません。

 

砂漠化の進むアフリカの大地で水のある場所に生活圏が限定されるという、きわめて厳しい条件のために、グレビーシマウマはその数を大きく減らしているのです。

 

また、とくにエチオピアではハンティングがグレビーシマウマの生息数を減らしているもう一つの原因です。 美しい毛皮のために、また一部では食肉のために狩猟が行われています。

 

こうした状況のところへ、国外からトロフィーハンターが乗り込んできてさらにその生息数を減らしていくのです。

 

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グレビーシマウマ
 

しま模様は人の指紋と同じ

現時点では、南アフリカでシマウマを狩猟の対象とすることは違法行為とはされていません。

 

ヨーロッパやアメリカからわざわざアフリカにまで渡航して狩猟を楽しむような人たちは概して裕福な人たちが多く、トロフィーハンティングはいわば「金持ちの道楽」にすぎません。

 

こうしたカネのある顧客にトロフィーハンティングツアーを提供する代理店は、40種類もの動物をハンティングの対象として用意していると言われています。

 

ハンターやその代理業者たちは「現地にお金を払ってトロフィーハンティングをやっており、そのお金は野生動物保護に使われるのだから、むしろ間接的に野生動物保護に寄与しているのだ」という主張を続けています。

 

しかしこの主張についても、その正当性に多くの専門家たちが疑問の声を上げています。

 

現在イギリスのザック・ゴールドスミス環境相は、ハンターたちが殺害した動物の頭部などを「トロフィー」としてイギリス国内に持ち帰ることを禁止したい、という意向を表明しています。

 

イギリス政府のこうした前向きな動きが期待できる中で、一部の人たちがいまだに「楽しみのために動物を殺す」という、最も許されないことをし続けているのです。

 

シマウマの「しま模様」はこの動物を特徴づけるものですが、ちょうど人の指の指紋と同じく、その個体独自の模様で、まったく同じものが存在しないことが分かっています。

 

各々のシマウマがそのシマウマにしかない模様を持っているわけで、そういう意味でも1頭1頭すべてがかけがえのない存在なのです。

 

 

 

出典:

British Trophy Hunters Pose with Vulnerable Zebras They’ve Killed For Fun - Tyla

Grevy’s Zebra | African Wildlife Foundation