ゾウは「過去の経験を記憶して、そこから将来の危険を察知する」ことができる動物

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このゾウは2006年、まだ生後5か月のとき、ケニヤのシェルドリック野生動物基金という団体に保護され、野生に帰ることが出来るようになるまで施設の中で人の手によって育てられてました。

 

 

 

数年が過ぎ、野生に戻るころになると、ゾウは自分を育ててくれた人たちと絆を作り上げていました。

 

野生に戻って暮らすようになってからも、かつて自分を育ててくれたこの施設に毎月のようにやって来ました。 そして育ての親である人たちとふれ合っていたのです。

 

そのゾウが最近この施設にやって来たとき、横に小さなゾウを連れてきました。お母さんになっていたのです。

 

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初めて子供を連れてきたとき、まだ子ゾウは生まれて数時間しかたっていなかったと見られています。 おそらくその前夜に生まれたばかりだったようです。

 

野生動物の母親は、生まれた子供が巣立つまではとてもナーバスになっていますので、人が無暗に近づくと本能的に凶暴なふるまいをする場合もあります。

 

しかしかつて自分を育ててくれた人をしっかりと覚えているこの母親は、生まれたばかりの子供に人が近づいても警戒することはありませんでした。

 

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過去の経験を記憶 → 将来の危険を察知

ゾウが優れた記憶力を持っているということは昔からよく言い伝えられています。

 

もちろんゾウがすべての記憶をとどめておくという意味ではありませんが、ゾウの脳が知能の高い動物に近い機能を持っていることは確かなようです。

 

想像しやすいことですが、ゾウはその体の大きさに比例してとても大きな脳を持っています。 陸上で暮らす哺乳動物の中では、ゾウの脳は最大の大きさになります。

 

また、体全体の大きさに対する脳の大きさの割合を測定する「脳化指数(EQ)」は「1.87」とされており、これはチンパンジーに近い数値だそうです。

 

さらに、ゾウの脳は「海馬」や「大脳皮質」と呼ばれる部分が大きく発達しています。 これは人の脳と似ている特徴で、そういう点でも知能の高い脳である(少なくともそれに近いつくりをしている)ということが出来ます。

 

海馬や大脳皮質は、問題解決能力の高さとかかわりがあります。

 

実際にゾウは過去の経験を記憶して、そこから将来の危険を察知するという能力があることが分かっています。

 

たとえば子供のころに干ばつの危機を生き延びたゾウは、大人になってからも乾季の訪れに敏感で、干ばつの起きやすい場所を察知することが出来るようになります。

 

同じ群れの中でも、年齢の高いゾウのほうが危機に直面しても生き延びる確率が高いことも分かっており、これも過去の経験を活かす能力が高いことがその理由です。

 

子供の将来のために

 

子供を連れて施設にやってくるこのお母さんゾウは、この施設の飼育員たちが安全な人たちであり、自分がかつて困難な状況にいたときに助けてくれたことを覚えているに違いありません。

 

この地域は9月になるととても乾燥するため、新生児の成育にとっては必ずしも好ましい時期ではないのです。

 

単になじみがあるからこの施設に来るというよりも、自分の子供がこの厳しい乾季を乗り越えられるよう、頼りになる施設の人たちのところに来ているのだと思われます。

 

動画で観るとまだ子供ゾウは赤ちゃんで、脚もおぼつかない状態ですが、少しずつ成長してしっかりしてきているそうです。

 

施設の人たちもこの母子の様子に注目し、その成長を温かく見守り続けています。

 

 

 

出典:

Elephant Introduces Her New Baby To The People Who Saved Her - The Dodo

Elephant Memory: Elephants Never Forget -- Is it true?