アメリカが哺乳動物を使った化学物質実験の廃止へ 動物実験廃止に向けた大きな動き

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https://www.youtube.com/watch?v=OFDcQboWIdE

 

アメリカの環境保護庁は、動物実験での有害化学物質の使用を徐々に減らしていくという方針を示しました。

 

これは、動物実験のうち哺乳動物が対象とされる研究の数を:

  • 2025年までに30パーセント減らす。
  • 2035年には全廃する。

という長期計画です。

 

同時に、環境保護庁は動物実験に代わる化学物質の検査方法の開発を目指すプロジェクトに425万ドルを投資することも明らかにしています。

 

最新の、かつ倫理的に健全な科学を用いることで、動物実験がなくても潜在的な影響を的確に査定することが出来る、というのが今回の環境保護庁のコメントです。

 

 

 

環境保護庁への報告に必要だった動物実験

環境保護庁はこれまで、化学物質が環境にどのような影響があるかを判断する必要があるため、売買したり使用したりする前に動物実験でその影響度合いを確認するよう求めてきました。

 

実験の対象になる動物はネズミ、犬、鳥、魚などです。

 

製造業者たちは自分たちの製品に使われている化学物質がアメリカ合衆国の安全基準を満たしていることを環境保護庁に対して証明しなければならず、そのためには動物実験が有効な手段である、とされてきました。

 

今回、その証明を求めている環境保護庁が動物実験の方法について大きく切り込んだ方針を示しているわけです。

 

【毎年2,600万頭が実験の対象に】

アメリカでは毎年2,600万頭の動物たちが科学の研究や商品開発のために実験の対象にされています。

 

医療品を開発し、投薬の毒性の程度をはかり、人間が使うにあたって危険性がないかを事前にチェックする、などがその目的です。

 

医療に必要なものだけでなく、化粧品やその他の嗜好品についてもこうした動物実験が行われています。

 

もちろんこれは動物の死体に対して行うものではなく、生きた動物に対して行われる生体実験ばかりです。

 

生きた動物を実験の対象にするのは大昔から行われてきたことで、一説によると紀元前500年ごろにはすでに始められていたともいわれています。

 

私たちが日常生活で受けている医療や薬品などが実用化される前には動物実験が行われていたわけであり、そこで犠牲になった動物たちも数多くいたという事実は忘れてはいけないことだと思います。

 

 

 

【賛成意見と反対意見】

動物実験の是非については、これまでも議論が活発に行われてきました。

 

賛成意見としては:

  • 動物実験は、人命、さらには動物たちの命を守るためにはやむを得ないものであある。
  • 動物実験に代わる有効な方法はない。
  • 法律・規則は整備されているので動物たちへの虐待にはならない。

といったものがあります。

 

彼らはたとえ賛成とは言わないまでも、動物実験はやむを得ないものであり、ある種の「必要悪」であるという考え方です。

 

一方で、反対意見としては:

  • 動物たちに対する残虐的で非人道的な行為である。
  • 現代の科学であれば動物実験に代わる有効な方法が存在する。
  • しょせん動物はヒトとは異なる生き物であるから、動物実験の結果が人間に当てはまるとは限らない。

というものです。

 

こうした意見の人たちは、これまでも熱心に動物実験に反対を唱えており、また化粧品メーカーの「ボディショップ」や「ラッシュ」など動物実験反対の立場で商品開発・流通を成し遂げた企業もよく知られています。

 

動物実験全廃へ】

冒頭で述べた通り、動物実験に代わる検査方法の開発が進められていますので、実現すれば「動物実験に代わる有効な方法はない」ということはなくなるでしょう。

 

また賛成の立場の人たちが唱えている「法律・規則は整備されているので動物たちへの虐待にはならない」という意見は、その根拠が十分ではないようです。

 

アメリカの「Animal Welfare Act」(動物福祉法)では様々な動物がその対象になっていますが、ラット、マウス、魚、鳥など、動物実験の対象にされることが多いこれらの動物は対象になっていないのです。

 

これらの動物は実験で犠牲になる動物の95%を占めています。 これでは法整備が十分であるとは言えないでしょう。

 

こうした状況を考えると、やはり動物実験全廃への動きは歓迎するべきことである言えます。

 

トランプ政権になって以降、動物愛護の立場からは賛成できない動きが目立っていましたが、環境保護庁(長官は大統領が任命する)が今回のような動きを見せたのは良い前進であると思います。

 

 

 

出典:

E.P.A. Says It Will Drastically Reduce Animal Testing - The New York Times

Animal Testing - Pros & Cons - ProCon.org