アメリカ政府「害獣」駆除のために毒入りのワナの使用を再開

トランプ政権になってから、その前のオバマ政権とは逆の方針で物事が進められていることが多くありますが、それは「人 vs. 動物」の場合も同じです。

 

今回、アメリカ政府は「害獣」対策のために、毒入りのワナを使うことを全面的に解禁しました。 コヨーテ、キツネなど野生の動物たちがその対象になります。

 

f:id:georgekato:20190810171110j:plain

 

【シアン化ナトリウムで毒殺してしまうワナ】

これは「M-44」と呼ばれるワナで、毒はシアン化合物が使われ、バネで動く仕掛けになっています。

 

このワナはアメリカ合衆国農務省の「Wildlife Services」(野生動物局)という下部組織によって用意され、配置されるものです。

 

農務省が主導で行っていることからも分かるように、これは農家や酪農家たちを野生動物たちの引き起こす害から守るというのがその目的とされています。

 

【人を巻き込む大きな事後からわずか2年】

当然ながら、これに対しては多くの反対意見や批判が続いています。

 

過去にもこのワナを使ったことで、絶滅危惧種が死んでしまったり、家庭のペットが犠牲になったり、さらには人間にまで害が及ぶという事態が発生してきました。

 

2017年、アイダホ州ティーンエージャーの男性キャニオンさんが飼い犬といっしょに森の中を歩いていたときのことです。 自宅が森の隣にあり、彼にとってはふだん通り「家の近所」で遊んでいたのです。

 

しかしこの森の中に設置されていたワナに犬が引っかかってしまい、毒の霧があたり一面にまき散らされました。

 

犬はその場で即死。キャニオンさんは緊急搬送され、一命は取り止めました。

 

この件で、キャニオンさんの両親は野生動物局を訴え、法廷闘争になったということです。

 

 

 

これはアイダホ州の森の中での事故でしたが全米に報道され、M-44に対する反対意見が広まっていきました。

 

まず野生動物局がアイダホ州でのM-44の使用を中止。

 

さらにこの動きがほかの一部の州へも波及してゆき、コロラド州でもM-44を一時的に使用しないことが決まり、またオレゴン州では州知事がワナの使用を禁止する政令に署名するなど、アメリカは「M-44」を使用しない方向へ少しずつ進んでいたのです。

 

しかしながら、そうした今までの流れとは逆の決定が今回なされてしまいました。

 

f:id:georgekato:20190810171945j:plain

 

【一応は一時的な許可】

野生動物局とは別に、環境保護庁がこのワナ「M-44」の使用についてレビューを行っていますが、環境保護庁も毒物を使用したこのワナの使用継続をしばらくの間は許可すると発表しています。

 

一応これまでの経験を踏まえ、環境保護庁は使用再開にあたって「一般道から100フィート以内にはM-44を設置することを禁ずる」としています。

 

また今回の使用再開許可は一時的なもので、最終的な決定は2021年以降に行う、とも言っているようです。

 

【これまでとは逆方向を行くトランプ政権】

最近のアメリカで、それ以前の流れとは逆の決定がなされるのは今回が初めてではありません。

 

以前は禁止されていた「エサでクマをおびき寄せて射殺する」という残酷なハンティングの方法が、2018年5月にアラスカ州で解禁されています。

 

これはクマが人を襲ってしまうからはありません。

 

クマがシカなどを襲ってしまうと、シカの生息数が減ってしまう。その結果シカなどを狙うスポーツハンティングが出来なくなる。だから元の原因であるクマを減らすための狩猟方法を許可しよう、というのがその理由なのです。

 

animallover.hatenablog.com

 

またメキシコとの国境の壁も、その付近を生息地にしている野生動物たちの行動範囲を狭めてしまうことが指摘されています。

 

その結果、今まで人のいるところには来なかった動物たちが農地などに現れるようになり、これまで以上に人と動物との衝突が多くなってしまう恐れもあるのです。

 

今回の毒入りワナ「M-44」の解禁も、こうした流れのひとつのようですが、できれば最後であってほしいと望むばかりです。

 

 

 

www.theguardian.com