動物愛護・環境保護に前向きではないボリス・ジョンソン新首相の誕生
2019年7月23日にイギリスの与党・保守党党首がテレーザ・メイ氏からボリス・ジョンソン氏に代わり、翌24日にジョンソン新首相が誕生しました。
最大の関心事はイギリスのEU離脱ですが、このジョンソン氏はあまり動物愛護や環境保護に熱心ではない人としても知られています。
熱心ではないというよりも、「キツネ狩り」の明確な支持者であり、また2017年には闘牛の支持者であることも公言している人物なのです。
【キツネ狩り禁止に反対】
イギリスでは「伝統的スポーツ」と言われていたキツネ狩りが動物愛護の観点から2000年代に禁止されましたが、当時国会議員だったジョンソン氏はこの禁止案に反対の立場を取り続けました。
2008年から2016年にかけてジョンソン氏はロンドン市長を務めていました。 このロンドン市長時代、彼は飼っていた猫がキツネに襲われたと主張し、これを機にロンドン市内でキツネ狩りを再開したいと言い出したことがありました。
「こうする(キツネ狩りを再開する)と支持を大きく失うだろうが、私は気にしない」などという独断的な発言もしています。
【海洋保護区制定を事実上拒否】
ロンドン市長を2期務めた後、再び国会議員に当選したジョンソン氏はテレーザ・メイ政権で外務大臣に任命されます。
彼の在任期間に、南大西洋にあるイギリス領「ジョージア・サンドウィッチ諸島」に海洋保護区を設定するよう285人の超党派の国会議員たちから強い要請が出ていました。
「ジョージア・サンドウィッチ諸島」というのは正確には「サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島」といい、南大西洋に浮かぶイギリス領の島々です。
ここは世界でも最も生物多様性の見られる場所の一つとして知られているところですが、海鳥のヒナがプラスチックを食べていることが判明するなど、海洋汚染がひどく進んでしまっている場所でもあり、保護区の指定が急がれていました。
しかしジョンソン氏は、彼の署名一つで保護区の制定ができるにもかかわらず、この件については放置したままでした。
ジョンソン氏はテレーザ・メイ前首相のEU離脱政策に反対し、2018年7月に外務大臣を辞任。 そのあと外務大臣になったジェレミー・ハント氏はすぐに署名に応じ、2018年12月に海洋保護区が制定されています。
【首相の座を目指して「グリーンな候補者」発言】
ほかにも2016年に行われたイギリスの二酸化炭素排出量の削減目標を決める投票や、エネルギー産業に二酸化炭素回収・貯留を求める法案などでもジョンソン氏は反対票を投じています。
また環境保護を訴える若者たちを「独りよがり」だとし、代わりに「中国にレクチャーしてやれ」と発言したこともありました。
このように、動物保護・環境保護についてはある意味「一貫した」姿勢を取り続けてきたジョンソン氏ですが、今回保守党党首に立候補する際には、ロンドン市長時代に取り組んだ気候変動対策について言及し、自分を「グリーンな(環境にやさしい)候補者」として印象付けようとしていたのです。
またイギリスを「クリーンエネルギーと環境保護の世界的リーダー」であると発言していました。
総理大臣に任命されてから初めて行った演説でも、イギリスはCO2排出削減や気候変動対策に役立つバッテリー産業で世界をけん引している、と強調しています。
さらに「イギリス人がいつも身近に感じてきた動物たちの福祉を向上させよう」とも述べています。
しかしこれらの発言は、ジョンソン首相が現在お付き合いしている女性が動物性の食べ物は一切口にしない「ヴィーガン」で、環境保護活動に熱心な人であるという個人的な事情が関わっている、というのが大方の味方のようです。
イギリスは動物保護やそれにつながる環境政策については先進国の中でも特に一歩進んできた国で、これからも私たちの見本になるような存在であり続けてほしいと願っています。
首相が変わったことで、あまり好ましくないニュースばかりが聞こえてくるようなことがないように祈るばかりです。
出典:
・Boris Johnson failed to protect biodiversity hotspot, says UN expert
・Boris Johnson: First speech as PM in full
・The new leader of the Tory party has reportedly been following a plant-based diet recently