カナダでイルカなどの海洋動物を娯楽目的で捕獲・飼育することが禁止に
2019年6月、カナダの国会ではクジラやイルカの飼育を禁止する法律が採択されることになりました。
この法律はエンタテインメント目的で海洋哺乳動物を生息地から引き離し、輸入したり飼育したりすることを禁ずるものです。 違反者には多額の罰金が科せられます。
直接輸入に関わらなくても、海洋動物を使った見世物のプロモーションや計画などに関与する、金銭を受け取る、オークションや関連するミーティングに参加するなどの行為も処罰の対象になるという、かなり徹底した内容になっているようです。
もちろん動物たちの救助やリハビリ、調査研究目的であれば対象にはなりません。 しかしこの場合でも許可が必要になります。
今回導入される法律がうまく機能すれば、新しくイルカやクジラなどの海洋哺乳動物が捕獲され、狭い水槽で飼育され続け、マリンランドなどで曲芸を毎日やらされる、(そしてその収益は人のポケットに入る、)というようなことは、カナダでは過去のものとなるのです。
【すでに導入されている国々も】
この種類の法律は、カナダより前にコスタリカ、インド、スイスなど多くの国ですでに導入されています。
北米ではカナダが初めての国になりますが、アメリカでもすでにいくつかの州や郡で禁止されているほか、合衆国全体で野生のクジラ目(もく)を輸入することが厳格にコントロールされています。
【過渡期に抱える問題】
現在カナダで海の哺乳動物を飼育しているのは、オンタリオ州にあるマリンランドとバンクーバー水族館のみです。
オンタリオ州のマリンランドでは現在シャチやオルカなどを含め60頭ほどのクジラ目(もく)が飼育されています。 またバンクーバー水族館は2018年にクジラ目の飼育をやめる計画を発表しており、現在はイルカ1頭が飼育されているだけです。
今回の新しい法律が導入されても、これらのすでに飼育されている海洋動物たちが強制的に海に戻されることはありません。
これは動物保護の観点からは、正当性のあることだと言えるでしょう。
今まで長い年月にわたって人の手で飼育されてきた動物が急に野生に戻されても、その中で自然に暮らしていくことが出来るとは限りません。
今日まで曲芸をやればエサをもらえるという生活を強制されていた動物が、明日から急に大きな海の中で自分でエサを取らなくてはいけない、という状況に追い込まれるのです。急な環境の変化について行けない可能性も高いでしょう。
そうであるならば、今まで飼育してきた海洋動物については今後も責任をもって世話を続けるのが正しいやり方である、と考えることも出来ます。
しかしその一方で、たとえ水族館などの専門的な組織であっても、特殊な動物の世話をするためにはかなりの費用がかかることになります。
同時に、この法律が導入されれば動物たちを見世物にはできなくなるため、今まで通りの収入は見込めなくなるのです。
今まで通りの飼育を続けなくてはいけない一方で、今まで通りの収入は見込めないため、水族館などは財政面で悩みの種を抱えることにもなってしまいます。
心配なのは、こうした収入減少が原因で、今後も世話を続けなくてはいけないイルカたちの飼育環境が悪化してしまう、という可能性も考えられることです。
私がチェックした記事などでは、こうした場合にカナダ政府のサポートがあるのかどうか、とくに言及はありませんでした。
法律を制定したあと、それが軌道に乗るまでの過渡期が一番大事なときですので、水族館だけの責任にするのではなく、その周りからのサポートもぜひあってほしいと私は期待しています。
・Bill S-203 and the future of marine parks in Canada - National | Globalnews.ca
・'Free Willy' law spotlights contradictions in how Canadians see animal rights