警察犬を守る法律「フィンズ・ロー」 英国北アイルランドではいまだ導入されず

こちらは警察犬のマックスです。 イギリスの北アイルランドで、行方不明者の捜索で活躍しています。

 

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マックスは4歳のラブラドール犬で、「臭気選別」能力の高度な訓練を受けています。最近では凍えるような寒さの中で2日間にわたって行方不明になっていた女性を、わずか8分で探しだした、という功績が高く評価されました。

 

もちろん、マックス自身は自分が女性の命を救ったなどということを理解してはいないかも知れません。それでも今後もこの北アイルランドで数多くの命を救ってくれると期待されています。

 

マックスはこの嗅覚を使った人命救助以外でも、海岸のレスキュー隊の手伝いにも参加しています。

 

しかし、もしマックスが勤務中に暴漢に襲われるようなことがあっても、法律による保護は十分ではないのが現状で、今それがこの北アイルランドで議論されています。

 

【警察犬が守られる「フィンズ・ロー」という法律】

2019年6月、警察で働く犬や馬の保護を定めた「フィンズ・ロー」が施行されました。この法律により、警察犬たちを攻撃した場合は刑法上の犯罪として扱われることになりました。

 

詳細は以前このブログでも3か月ほど前に取り上げています(「警察犬への攻撃が犯罪として罰せられる「フィンズ・ロー」の話」)が、以下その経緯を簡単にご説明します。

 

フィンズ・ローというのは、2016年にイングランドの警察犬フィンが業務中に強盗犯に襲われた事件がきっかけで作られたものです。

 

フィンはいっしょに働いていた警察官が襲われたのを助け、ほかの警察官が援護に来るまで犯人を放そうとしませんでした。 そのときに犯人はフィンの胸や頭部をナイフで刺し大けがを負わせたのです。

 

しかし、この犯人は警察官を襲ってケガをさせた罪には問われましたが、フィンへの襲撃についてはモノを壊したときに適用される「器物損壊罪」に問われただけでした。

 

これがきっかけとなって始まった運動が実を結び、「Animal Welfare Act(動物福祉法)」が改正され、警察で働く犬や馬を傷つけた場合も重大な犯罪として扱われることになりました。

 

この改正された法律を「Finn’s Law」(フィンの法律)と呼ぶようになったものです。

 

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(フィンは一命を取り止めケガから回復。2017年に警察犬を引退しています)

 

 

 

【4つの「地域」で構成されるイギリス】

しかしフィンズ・ローはイギリス国内でもイングランドウェールズだけで施行されている法律です。

 

イギリスにはほかにもスコットランド北アイルランドがあり、これらの地域ではそれぞれの議会が力を持っていて、独自の立法府として機能しています。 そのため、イングランドウェールズでは通用している法律も、スコットランド北アイルランドに行くとそうではない、ということがふつうに起こりうるのです。

 

このうちスコットランドでは、イングランドウェールズでの施行後すぐに、同じ法律を導入するという方針が示されました。

 

しかしながら北アイルランドでは、まだこうした方針は示されていません。 ということは、もしマックスが襲われるようなことがあっても、あくまで器物損壊として扱われてしまうことになってしまいます。

 

【人の安全のために働く犬たちの安全】

現在北アイルランドでは、3万人を超える人たちがこの現状を変えるよう訴えを続けています。

 

もし北アイルランドでフィンズ・ローが導入されれば、警察犬だけでなく、盲導犬やその他の障がい者を支援する犬たちへの襲撃も厳罰の対象になります。

 

フィンズ・ローの導入を支持する人たちは、「現行の法律の欠点を正す」ことが必要なのであって政治問題ではないのだ、と訴えています。

 

「私たちにとって必要で、また責任もある動物たちを法律が保護していない、というのは倫理的ではありません」。

 

人々の安全のために働く犬たち。その犬たちの安全が十分に守られる、という当たり前のことに向けて、今北アイルランドの人たちが活動を続けています。

 

 

 

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