アフリカ南部の国ボツワナが「生息数の増加」を理由にゾウの狩猟を許可 その本当の理由は権力闘争か?

f:id:georgekato:20190525223405j:plain

 

アフリカ南部の国ボツワナが、ゾウの狩猟を許可する決定を出しました。 ボツワナ政府の今回の決定は、「ゾウの生息数が増加し、ゾウたちの引き起こす周辺の農家への影響が甚大なものである」というのがその理由とされています。

 

ボツワナの前の大統領は自然環境保護に熱心な人でした。 2014年にはゾウの狩猟禁止令が出されていますが、それも彼の功績でした。

 

しかし与党のボツワナ民主党の議員たちは、前大統領が推し進めた禁止令を解除するためのロビー活動を続けてきました。 彼らが訴えている理由は、ボツワナ国内のいくつかの地域でゾウの生息数が多くなりすぎたためコントロールができなくなった、というものです。

 

ボツワナはアフリカ大陸でも最もゾウの生息数が多い国で、13万5千頭が野生で暮らしています。 専門家の中には、過去30年間でゾウの生息数はほぼ3倍になっており、正確な生息数は16万頭を超えている可能性がある、とも言っている人たちもいるようです。

 

2018年に就任した現在の大統領は、前大統領による禁止令について再検討作業を始めました。

 

その後ボツワナ環境省は:

  • 人とゾウとの衝突が頻発し、人が被る被害が大きくなっている
  • 有識者たちは、狩猟禁止令が解除されるべきであるという合意に達した
  • ハンティングはルールに基づき、倫理的な方法で再開されることを誓う

という内容の発表を行いました。

 

それが今回のゾウの狩猟が許可される決定へとつながったのです。

 

象牙取引が加速する心配も】

f:id:georgekato:20190525225518j:plain

 

一方で、ゾウに対して武器を向けることはゾウたちの恐怖心をあおり、神経を苛立たせてしまうことになり、その結果ゾウたちは今まで以上に凶暴化し、地元住民との衝突が悪化する可能性がある、と指摘する専門家もいます。

 

また、ゾウの殺害を引き金に象牙の売買が再び活発になる恐れがあるのです。

 

現在でも象牙取引の問題は続いていますが、ゾウの生息数が多いボツワナでひとたびハンティングが可能になると、象牙取引はさらに勢いづいて悪化する可能性があります。

 

ボツワナに隣接する国として、ナミビアザンビアジンバブエがありますが、現にこの4か国は「ゾウの生息数増加」を理由に、象牙取引の禁止を緩和するよう訴えている国々なのです。

 

ゾウの生息数をコントロールすることと、象牙取引を行うことが直接関係があるとは思えません。 しかし彼らは「増えすぎたゾウを間引きして、象牙を中国などに売り払い、その収益で野生に暮らす残りのゾウたちの世話をする」という主張をしてその行動を正当化しようとしています。

 

確かに一部の地域ではゾウの生息数は増えているようです。 しかし国際自然保護連合(IUCN)によると、過去10年間でアフリカに生息するゾウの数は11万1千頭減少し41万5千頭になったことが分かっています。

 

これはやはり象牙目的の密猟が大きな要因でした。

 

 

 

【ゾウの狩猟許可 その本当の理由は?】

農業を営む現地の人たちが、農地に入り込んでしまうゾウに悩まされていることも事実です。 ゾウたちは農作物を食べてしまうだけでなく、場合によっては人を襲って殺してしまうこともあるのです。 

 

一方、こうした状況の中、ボツワナでは今年の10月に選挙が行われます。 ゾウの狩猟許可に向けた運動を進めている陣営が、ゾウとの問題を抱える農村地域の票を獲得しやすい、という読みもあるようです。

 

また、現大統領が前大統領と政策上対立していた可能性を示すレポートも出されています。

 

ゾウの狩猟許可の本当の理由が、野生動物の保護や現地の人たちの日常生活を守ることではなく、その裏にある権力者たちの争いなのであれば、とても残念なことです。

 

 

 

出典:

Botswana condemned for lifting ban on hunting elephants | World news | The Guardian

Zimbabwe sells elephants to China and Dubai for $2.7 million - CNN