ジュゴンという海洋動物についてあらためて学習しよう

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最近、ジュゴンについての悲しいニュースがありました。

www3.nhk.or.jp

 

広く報道されましたのでご存知の方も多いと思いますが、この「ジュゴン」(英:Dugong)という動物のことをよく知らない人もやはり多いと思います。

 

私自身もジュゴンについてはほとんど知らず、オットセイかイルカの親戚だろうか・・・?などという勘違いをしていました。こであらためてこの動物について学んでいきたいと思います。

 

 

 

ジュゴンはゾウの遠い親戚】

分類上「ジュゴン目(またはカイギュウ目)」の下には4種類いることが知られています。その4種類のうち3種類は「マナティー科」に分類され、残りの1種が「ジュゴン科」のジュゴンです。

マナティー科を含めたジュゴン目の動物たちはその見た目からクジラやイルカの仲間のように見えますが、実は「近蹄類」というゾウと同じ仲間に分類されます。

 

【身体の大きさ、マナティーとの違い】

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ジュゴンはその重くどっしりとした体つきから「海牛(カイギュウ)」とも呼ばれています。体はグレーっぽい茶色をしており、体長は2.4メートルから最大で4メートルにも達し、大人になると体重は230㎏から中には400㎏にも及ぶものもいます。

体の前に短くてパドルのようなヒレと左右に広がった尻尾を持っており、これらは海中を泳ぎ進むときに役立っています。 尻尾の形はジュゴンマナティーを区別する特徴の一つで、マナティーの尻尾は丸く平べったいヘラのような形をしていますが、ジュゴンの尻尾はクジラの尻尾のように左右に広がった形をしています。

ジュゴンの耳はどこにあるのかよく見えませんが、その聴力はきわめて優れており、あまり視力のないジュゴンにとっては大切な感覚器です。

またジュゴンには牙が生えていますが、これは大人のオスか老齢のメスだけに見られるものです。

 

 

 

【群れで行動】

ジュゴンは群れをなす動物です。2頭だけで行動する場合もありますが、200頭の大規模なグループになることもあります。2頭のペアの場合は母親とその子供の場合がほとんどです。大規模なグループを形成する場合も、そのメンバーすべてが必要なエサを手に入れることは難しいため、長い間いっしょにいることはないようです。

ジュゴンは長距離を移動するものもいれば、同じ場所に最期まで暮らすものもおり、食べ物がなくなったときだけ移動するという半移住性動物とされています。

ジュゴンはとても大人しくて敏感な動物ですので、ダイバーなどが観察するときは接近しすぎずに、なるべく距離を置くことが大切です。

またジュゴンはイルカのように甲高い鳴き声を発したり、口笛のような音を出したりして、お互いにコミュニケーションをとっていることも知られています。

 

【海洋哺乳動物では唯一の草食動物】

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ジュゴンは完全な草食動物です。海に暮らす哺乳動物で完全な草食動物であるのは、ジュゴンだけであると言われています。

特徴のある上あごを使って海草の生えている海底をかき上げて、出てきた海草を食べる、というエサの食べ方をします。そのため、ジュゴンが掘り起こした場所が道のような跡となって残っているのが海底に目撃されます。

代謝のスピードが遅いことも知られており、また海草が見つからないときは海藻を食べることも分かっています。

 

 

 

【寿命は約70歳】

ジュゴンの母親は18か月以上にわたって子供に母乳を与え続けます。 この間、子供は常にお母さんから離れることはなく、時には母親が子供を背中に乗せて泳いでいるのが目撃されるそうです。

18か月にわたる母乳による子育てが終わっても、子供は6歳~9歳まで母親の近くで暮らし続けます。 その後、子供は独り立ちして、繁殖のためのパートナー探しを始めるようになるのです。

野生に暮らすジュゴンは約70歳以上まで生きることが分かっています。ジュゴンの牙は木の年輪のような層が積み重ねられていくため、そこから年齢を判別することができます。

 

【人間の活動に巻き込まれ絶滅危惧種に】

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ジュゴン国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに「危急種(vulnerable)」として指定されています。アメリカでも絶滅危惧種に指定され、またワシントン条約(CITIES)の「附属書I」(絶滅のおそれがあり、取引により影響を受ける種)にも載っています。

こうした絶滅の危機に追い込まれたのは、主に人間の活動が原因です。

漁業網に引っかかってしまい、海面に頭を出すことが出来ずに溺れ死んでしまうという例が報告されています。ジュゴンは海中で暮らす動物ですが、もぐっていられる時間は最長12分間なのです。

ジュゴンが主食とする海草は海中の比較的浅いところに生息しています。そのため、エサを食べるときは海面から約10メートルのあたりで長い時間を過ごすことになります。そんなジュゴンたちは海面を走行している船の船体に衝突したり、中にはプロペラに巻き込まれてしまうという事故に遭遇しがちです。

海水汚染が原因でエサとなる海草が足りなくなったり、かつて一部の国ではジュゴンの狩猟が行われていたことも知られています。

またジュゴンは繁殖に時間がかかる動物です。 メスのジュゴンが子供を産めるようになるのは若くても6歳まで成長してからです。子供は2.5年~7年に1頭しか産むことが出来ず、妊娠期間は13~14か月にわたります。

今生きているジュゴンの1頭1頭が、かけがえのない存在であると言えるでしょう。

 

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