シリア難民が母国に残してきたペットと再会できるよう保護活動を続ける女性の話

この女性は、シリア難民がやむを得ず自国に残してきたペットたちと再会できるよう、「Animals Syria」という動物保護団体を立ち上げて保護・移送活動を行っている人です。

 

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彼女がどのような経緯でシリアに暮らしていたのかなどは語られていませんが、かつてのシリアは「今よりもっと危険」で「戦闘や爆撃が毎日起きていた」国だったと話しています。

 

「想像に難くないことですが、そこで暮らす動物たちの優先順位は低いままでした。それは今でも同じです」

 

「こうした状況を変えようと日々努力している人たちがたくさんいますが、それでも動物たちはひどい扱いを受け続けているのです。生まれて一週間の子猫にライターの液を注いで、生きたまま火あぶりにして遊んでいる子供たちを目撃したこともあります」

 

これは、シリアではペットを家の中で買うという習慣がないことが原因の一つであると、この女性は述べています。

 

「ほとんど人たちが(外にいる)動物たちを好ましく思っていません。動物たちは汚物のように見られてしまっているのです。もしシリアで自動車が動物を跳ね飛ばしたとしても、誰も見向きもしません。警察に通報する人もいないのです」

 

「政府は動物の権利保護については何も対策をとっていません。もし政府が行動をおこせば、人々はもっと動物に優しくなるでしょう」。

 

【ルーシーとの出会い】

「何年も前になりますが、ある猫が道路上で血だらけになっているのを発見しました。子供たちが猫の後ろ足を切り落としてしまい、猫は出血が止まらなくなってしまっているのです。私はそのネコを病院に運び、緊急処置をしてもらわなければいけませんでした」

 

「私は自分でこの猫を引き取ることにしました。「ルーシー」と名付け保護していましたが、数年後、オランダのある女性が友人を介して連絡をくれて、ルーシーの里親になりたいと申し出てくれました」

 

「私はルーシーが大好きでしたが、もっといい生活をしてほしいと思いその申し出を受け入れました。これが私が運営する動物保護団体「アニマルズ・シリア」の始まりだったのです」

 

ルーシーの里親になった女性もこの意志に同意し、「アニマルズ・シリア」の仕事に参加してくれたそうです。

 

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(現在のルーシー)

 

【これまで400頭の猫を保護】

通常、シリアの人々が国外に出るときに、船で出国することは禁止されています。そのためペットとして飼っていた動物を自分といっしょに連れ出すことが出来ないのです。

 

シリアの路上にたくさんの捨てられた動物たちが残ってしまうのは、これが大きな理由だと言われています。

 

「出国前に動物を保護施設に入れたり、シリアに居残る親戚に預けたりする人たちがいます。彼らは国外でいったん落ち着くと、私たち「アニマルズ・シリア」に連絡してペットの移送を依頼してきます」

 

「私たちは動物の移送に必要な手続きを引き受け、血液検査やワクチン接種などを行い、さらにマイクロチップの装着も行います。こうした手続きすべてに約4か月かかります」

 

Netflixで放映された『ドッグ・ストーリー: あなたは一番の友達』のあるエピソードで私たちが取り上げられました。ドイツに暮らすシリア難民の男性が、シリアに残してきたゼウスという名の犬と再会できるまでの様子をとらえたドキュメンタリーで、この番組のあとには多くの人たちが私たちの活動に興味を持ってくれました」

 

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「私たちが現地で保護した動物たちのほとんどがドイツ、オランダ、アイスランドに移送されます。今まで400頭の猫と15頭の犬をヨーロッパへ、44頭の犬をアメリカに移送してきました」

 

ほかにも鳥やキツネ、サルやロバなどの保護をしたこともあったそうです。現在「アニマルズ・シリア」では、主に体に不自由のある動物たちの救助に力を注いでいます。

 

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(今まで保護してきた動物たち)

 

【政府が動物保護を始めるまで続ける】

今後も救助の必要な動物たちを助け続けるつもりだ、と女性は語っています。

 

「2011年に始めたころは、動物の移送費も治療費もすべて私たちの自腹で支払っていました。当時は会社員生活を送りながら8頭の猫を飼っていました。加えて、一時的に保護していた猫が何頭もいたのです」

 

「この数年は、寄付に頼ってやりくりしてきました。しかし寄付も十分な金額ではないため、かかるコストすべてをカバーすることは通常不可能です。結局自分で支払うことになります」

 

現在はオランダに暮らし、「アニマル・シリア」の事務処理、動物の移送・治療について手続きを受け持っています。現地シリアにもこの団体の職員がおり、ほか数名のボランティアの協力も得ながら活動を続けています。

 

彼女は今のところシリアに戻ることは考えていないそうです。動物たちが苦しんでいるところを毎日目にするのに耐えられない、と述べています。

 

「政府が動物の権利を保護する政策をとらない限り、シリアに戻るつもりはありません。しかしシリアは戦争を続けている国ですから、動物保護対策をすぐに始めるとは思えないのです。それまで私は動物の保護を続けるつもりです」

 

「この活動は、初めて保護した猫ルーシーのおかげで始まったものです。ルーシーは私をいつまでも励ましてくれます。ルーシーがいなかったら、今自分がこうした活動をしていることもないでしょう」。

 

Animals Syriaのフェイスブックページ(英語)は「www.facebook.com/animalssyria」。

 

 

 

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