世界に67頭しかいないジャワサイ インドネシアを襲う津波から守り抜くための努力
サイという動物は5種類に分類されていますが、その一つである「ジャワサイ」はウジュン・クロン国立公園内に暮らす67頭のみの生息が確認されているだけです。
この国立公園は、12月22日にインドネシアを襲った津波によって甚大な被害を被った場所のひとつです。
今回の津波はアナク・クラカタウ島という火山の活動が引き起こしたものとされていますが、この火山が今でも活動中であるため、再び津波が起こる可能性も懸念されています。もし再度の津波が起こった場合、ウジュン・クロン国立公園が再び被害に見舞われることも考えられます。
そのため、公園内に暮らすジャワサイを大至急移動させようという計画が進んでいるのです。
【ジャワサイとは?】
5種類のサイ科の中でも、ジャワサイはその絶滅が最も危惧されている種です。
かつてはインドの北東部から東南アジアまで幅広く生息していました。 しかしジャワサイもまた、密猟や農業開発による生息地破壊などが原因でその数が激減してしまいました。
ヴェトナムには2000年代に入っても生息していましたが、2010年に最後の1頭が密猟によって殺害されています。
ジャワサイを飼育している動物園は世界中どこにもないため、もし現在生存が確認されている67頭がいなくなってしまうと、完全に絶滅してしまうことになるのです。
【サイたちの引っ越し先を求めて】
アナク・クラカタウ島は2018年6月ごろから火山活動が活発になっていました。 12月22日の津波はこの火山活動が引き起こした海底の地滑りが原因だと見られています。
この火山活動は現在でも続いており、今のところおさまる気配はないようです。
こうした中、ジャワサイを現在の生息地であるウジュン・クロン国立公園内だけに置いておくべきではない、という意見が出てきています。
67頭を少数のグループに分けて、ほかの場所に移動させる計画が進められているのです。
【数々の条件】
しかし、これも簡単な話ではありません。野生動物たちはどこでも暮らせるわけではないのです。
サイたちを移動させるとなると、やはり健康状態が良好である必要がありますし、また仲のいいオスメスのペアを選ばないと子供を産む可能性も低くなってしまいます。
さらに、ジャワサイのエサのためには、200種を超える植物が生息している場所でなくてはいけない、という条件も求められます。
当然、水も十分あり、土の状態も何でも構わないわけではなく、さらに湿潤気候ということも重要な要素です。
広さも最低5千ヘクタール(50㎢)が求められます。
どんな種類の病原菌がいるのか、サイの天敵はいるのか、現地に暮らす人たちはサイたちの新しい生活に協力してくれるのか・・・ とにかくたくさんの条件を満たさなくてはならないのです。
【政府も生息地探しに乗り出す】
すでにインドネシア政府がここ数年間にわたって、新しい生息地を探し続けてきました。 少なくとも10か所を候補地として調査した結果、2017年にはジャワ島西部にある有力な候補地が見つかりました。
しかし実現には至りませんでした。
ここは軍隊の練習用地としても使われる場所で、銃や大砲などの音がサイの生活にどう影響を与えるかがはっきりとは分からないため、候補地からは外されてしまったのです。
その後も新候補地を探し続けていましたが、今回の津波によって緊急性が高まったわけです。
12月22日の津波では公園内にあった建物は破壊され、また公園の管理をしていた人も2名亡くなっています。
しかしジャワサイたちは幸運にも無傷で生き延びていました。
サイたちはふつう公園の南側で生活していますが、津波は公園の北側を襲ったことが、この幸運につながったと見られています。
しかし、もし津波が再び襲うようなことがあったときにも同じ幸運が約束されているとは限らないのです。