クリスマスイベントで活躍するトナカイ その飼育状況をとらえた動画によりイベントが中止へ
ヨーロッパではクリスマスシーズンになると、この季節を象徴するトナカイがあちらこちらに登場するようになります。
ショッピングセンターでの催し物、サンタクロースが登場するパレード、クリスマスツリーのライトアップなどといった年に一度のイベントにトナカイが登場し、盛り上げ役として活躍しています。
しかし今年のイギリスでは、トナカイを使ったイベントの中止が相次いでいます。
それは2018年11月初旬に発表されたある動画がきっかけでした。
この動画は動物愛護団体「アニマル・エイド」が隠しカメラで撮影したもので、見世物にされるトナカイたちが暴力をふるわれている様子がハッキリと映っています。
場所はイギリスのケント州にある「The Reindeer Centre」というトナカイ牧場です。
【動画の概要】
トナカイは完全に家畜化された動物ではなく、本来はツンドラ地域に暮らす動物です。
ツンドラで暮らす人たちと一緒に生きていくことはできる動物ですが、人ばかりが暮らす高度な文明社会で飼育できるような動物ではありません。
この動画には、私たち一般の素人から見ても明らかに健康だとは思えない状態のトナカイたちがたくさん出てきます。
ツンドラという広大な平地で暮らすはずの動物が、このような狭い場所に押し込まれているだけで、異常な状態であるといわなければなりません。
さらにこの飼育場は、一年のうちのある期間は一般開放されており、お客さんが柵の外からトナカイを眺めに訪れるようになります。
狭い柵の中に閉じ込められた上に、人の目に触れ続ける状態に追い込まれるわけです。
飼育場が一般開放されていない期間も含め、トナカイたちは明らかに十分な世話をしてもらっていないようです。
このトナカイは明らかに毛が抜けてしまっています。
お腹を下しているトナカイもいるようです。
問題なのはこのお粗末な飼育環境だけではありません。
この飼育係は体の小さなトナカイのお尻を蹴飛ばしています。
動画を観ると分かりますが、この小さなトナカイは逃げ出そうとしたわけでも飼育係を攻撃しようとしたわけでもないのです。それにもかかわらず、このような扱いを受けています。
これは飼育でもなんでもない、悪意ある暴力であり、間違いなく虐待です。
また同じ飼育係と思われる人が、トナカイに向かって大声で怒鳴りつけている様子も映っています。
【高まる批判の声】
この「The Reindeer Centre」の一般開放期間に訪れたお客さんも、目の前のトナカイたちの様子を見て批判の声を挙げるようになっていました。
また、同じイギリスにあるハートフォードシャー大学では、当初クリスマスマーケット用にトナカイをレンタルする予定でしたが、学内で動物愛護の声が高まり5千人を超える学生が反対の署名をしたため、トナカイのレンタル中止に至りました。
アニマル・エイドはこの動画の最後で「私たちのできること」として「こういう事実があるということを広め、友人や家族に意識を持ってもらい、ネット上であなたの意見を表明し、地元の新聞に投稿してください」と呼びかけています。
こうした呼びかけが功を奏したのでしょう、イギリス国内では上記のハートフォード大学以外でも数々のイベントが中止を表明しています。
なお、批判を受け、このトナカイ牧場「The Reindeer Centre」は、動画内でトナカイを蹴飛ばしている従業員を解雇した旨の声明を出しています。
アニマル・エイドでは、将来はトナカイのイギリス国内への輸入禁止に向けて運動を進めていきたいとしています。
出典:
・University of Hertfordshire students' reindeer plan halted over complaints - BBC News