ホッキョクグマの新陳代謝のレベルが高いことが判明 エサが足りず生息数減少を加速

 

 

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ホッキョクグマ絶滅危惧種であることは以前から知られていますが、最新の研究では、生息数の減るスピードがこれまでの予測よりも速い可能性があるという結果が出されました。

 

これは、ホッキョクグマの新陳代謝の機能ががこれまで考えられてきたレベルよりもはるかに高い、というのがその理由です。

 

この研究はアメリカ地質調査所とカリフォルニア大学サンタクルーズ校が共同で行ったもので、9頭のホッキョクグマを対象に実施されました。

 

研究チームは2014~16年の毎年4月、アラスカ沖のボーフォート海を調査場所とし、対象のホッキョクグマにはビデオカメラとGPS機能を搭載した首輪をつけ、その活動を記録。同時に血液検査も行いました。

 

 

これまでホッキョクグマは、アザラシが呼吸をするために氷の穴から顔を出すのをずっと待ち続ける習性があるため、比較的エネルギーを消費しない生活をしていると考えられていました。

 

しかし実際には、新陳代謝のレベルがこれまで推定されていたよりも50%も高いことが今回の研究で判明したのです。具体的には「体を維持するためには、10日間ごとにワモンアザラシの大人1頭または子供3頭が必要」ということです。

 

しかし調査対象だった9頭のうち5頭がこの最低栄養量を確保できておらず、中には20㎏も体重が落ちてしまっているホッキョクグマもいました。

 

原因についてはこれまで指摘されてきた通り、地球温暖化のためにホッキョクグマたちの生息環境が変わり、十分なエサを確保できなくなったことです。 くわえて新陳代謝の機能が高いとなると、これまで想定されていた以上のエサ(おもにアザラシ)が必要であるということを意味します。

 

またホッキョクグマは冬眠をするため、その直前にエサを多く摂り栄養を蓄えておく必要がありますが、それも難しくなっているのです。

 

下の動画はカナダ北部の北極海付近で撮影されたホッキョクグマの映像です。 ふつうの生息地域からは遠く離れた人の暮らしている場所まで現れ、ゴミ漁りをしている姿がとらえられています。

 

 

明らかに痩せこけた1頭のホッキョクグマが、氷のまったくない地面の上を弱々しく歩いています。 食べ物を求めて汚らしいドラム缶に顔を突っ込み、何かをくわえています。 筋肉は完全に衰え、毛皮もボロボロになっているのが映像からも見て取れます。

 

ホッキョクグマについて研究を続ける専門家たちも、(このままの状態を続ければ)将来はこういった光景をもっと多く目撃することになるだろう、と警告を発しています。

 

ホッキョクグマたちの立場で】

北極は地球全体と比べて2倍のスピードで温暖化が進んでいます。

 

毎年9月は北極圏の氷の量が最も少なくなる時期ですが、その9月の比較で見ると、1979年以来10年間で約13%のスピードで氷の量が減ってきています。

 

一方グリーンランドや南極の海氷は、北極圏と比べると温暖化から受ける影響が少ないと見られています。

 

それでも、グリーンランドではこの10年間で2兆トンという大量の海氷が消えてしまっています。 

 

アメリカでもホッキョクグマ絶滅危惧種に指定されていますが、トランプ大統領は前のオバマ政権による地球温暖化対策のための規制を見直す政策を進めています。

 

しかし、大統領本人が今の北極の実情を分かっていないのではないか、と怪しむ声も上がっています。

 

2018年1月に行われたインタビューでもトランプ大統領は「地球上の氷は溶けてしまうといわれていた。今ごろは全部溶けて無くなってしまっているはずだった。しかし今、氷は記録的な量にまで増えているのだ」という意味の発言をしているのです。

 

地球温暖化について懐疑的な立場の人は、トランプ大統領のように権力のある人たちの中にも残念ながら多くいるようです。

 

たしかに「地球温暖化」や「北極の氷」という広い視点で見ると、どうしても問題の実態を捉えにくいかも知れません。

 

しかし、明らかにその影響を被っているホッキョクグマたちのことを考えると、このままではいけないと感じる人がもう少し増えてくれるのではないか、と思います。

 

 

 

www.theguardian.com