相変わらず続くセンザンコウの密輸 今でも5分に1頭が捕獲されている絶滅危惧種
毎年2月の第3土曜日は「World Pangolin Day」(世界センザンコウデー)とされているようです。
世界で密輸のターゲットとされることがもっとも多い動物「センザンコウ」についての意識を高め、その生存を守ろうと2012年から続けられています。
世界中からこの罪のない動物に対して温かい目が向けられ始めており、これは大いに歓迎すべきことである一方、そんなことお構いなしに平然と密輸を続ける人たちもいまだに後を絶ちません。
【5分に1頭のスピードで捕獲される】
2月の始め、動物愛護団体「セイヴ・ヴェトナム・ワイルドライフ」へ緊急の通報があり、救助隊員2名が南部ヴェトナムに駆けつけました。
密輸業者が摘発され、合計114頭のセンザンコウが発見されたからです。
通報当時、その多くはまだ生きていたそうです。
残念なことに、救助隊員にとってはこのような密輸摘発現場を目撃するのは珍しいことではありませんでした。
センザンコウはその肉やウロコ目当てで売り飛ばすことを目的に、約5分に1頭のスピードで捕まえられているといわれています。
アジアやアフリカで捕まえられたセンザンコウたちは、ウロコに漢方としての価値があると信じている中国やヴェトナムへ売られています。
この「センザンコウのウロコに医薬の効能がある」というのは、科学的にはまったっく証明されていないことで、勝手な迷信にすぎないといわれています。
しかしこの迷信のせいで、中国などではセンザンコウの需要がとても高くなっているのです。
過去10年間で約100万頭のセンザンコウが違法に売買されてきました。
体重の重いセンザンコウほど値段が高くなるため、業者たちは必要以上にエサを食べさせたり、ひどい例では水を体内に注射するといった明らかな動物虐待行為を行って売上アップを狙うともいわれています。
【捕まえられると長く生きられない】
しかしこのたびヴェトナムで発見された114頭のセンザンコウたちは、体重増加どころか長い間エサを与えられずにいました。
栄養失調で弱っていたり生死をさまよっているものが多くいたため、治療のできる場所へセンザンコウたちを搬送。
しかし、結局114頭のうち半数以上は脱水症状や下痢を起こしていて、助かることはありませんでした。
センザンコウは野生の生息地から捕獲されてしまうと、大きなストレスを感じるため、結局長く生き延びることはできません。
これは今回のように運よく密輸業者たちの手から取り返すことができても同じです。
とくに今回は、密輸が摘発された場所と動物救護センターとの距離が離れていて、交通網も発展していないところだったため、搬送に2日間かかってしまいました。
そのために、搬送中に数頭が死亡してしまっています。
しかしその一方で、生命力の強さを示したものもいました。
1週間にわたって何のエサも与えられていなかったとみられるセンザンコウたちは、久しぶりのエサを美味しそうに食べていたそうです。
【全8種が絶滅危惧】
結局、114頭のうち50頭だけが生き残りました。
今そのほとんどが落ち着きを取り戻し、体を丸めてボール状になることはほとんどなく、元気にエサを食べるようになりました。
救護センターではこの50頭が完全に回復し、野生の生息地に帰れるようになるまで世話を続ける予定です。
以前もこのブログでは「「センザンコウ」って何者? 意外と知られていないこの絶滅危惧種について学ぼう」という記事でセンザンコウについてご紹介しています。
そこでも触れましたが、この動物は全部で8種類いて、4種類がアジアに、ほかの4種類がアフリカに生息しています。そして、そのすべてが絶滅危惧種であるということをあらためて述べておきたいと思います。
センザンコウは日本にいる私たちはあまりなじみを感じませんが、今も人間たちの欲のせいで苦しんでいる動物たちがいるということは、ときどき思い出す必要があるでしょう。