海中のプラスチック廃棄物で苦しむクジラたちの惨状

 

 

先日ノルウェーの海岸に1頭のクジラが打ち上げらられ、その体内から30枚を超えるビニール袋が発見された、というニュースがありました。

 

救助隊の隊員たちが打ち上げられたクジラを調べましたが、助かる見込みはないと判断されたため、クジラは安楽死させられました。

 

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このクジラは「アカボウクジラ」と呼ばれる種類で、海岸の浅いところで動けなくなっているところを発見されたものです。

 

体からは脂肪がそげ落ちてしまい、すっかり衰弱していました。

 

体内に蓄積されたプラスチックのせいで栄養失調に陥っていたものと見られています。

 

今回このクジラの調査に当たった動物学者は、「ビニールによってクジラの内臓が詰まってしまっており、かなりの激痛を感じしていたはずだ」とも述べています。

 

いわゆる生分解性(微生物によって自然に無害な物質に分解されるもの)ではない廃棄物を大量に取り込んでおり、とくにビニール袋がこのクジラの胃を詰まらせてしまっていたのです。

 

しかし専門家たちはこの異常な死因は決して驚くことではない、と指摘しています。

 

 

【プラスチック廃棄物を飲み込んでしまうクジラたち】

クジラや一部のサメなどは海水を口の中に含み、いわゆる「クジラのひげ」を通して海水だけを口から出し、残ったプランクトン(浮遊生物)を食べることで暮らしている動物たちです。

 

しかし海水だけを口から出しても、プランクトンだけでなく海中に浮かんでいたプラスチックも口の中に残ってしまうため、いっしょに食べてしまうことになります。

 

クジラはあの巨体ですので、一日に数千立方メートルの量の海水を口に含むといわれています。

 

結果としてその中に含まれるプラスチックも大量に飲み込んでしまい、これがクジラたちの栄養摂取を妨げ、また同時にプラスチックの毒素による副作用を引き起こしている可能性もあるといわれているのです。

 

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【毎分トラック1台分のプラスチックごみ】

専門家たちは2017年の始め、2050年には海の中に海洋生物の数よりもプラスチック廃棄物のほうが多くなるだろう、と警告を発しました。

 

毎年、少なく見積もっても800万トンに上るプラスチック製廃棄物が海に流れ出ています。

 

これは1分にトラック1台分が海に捨てられているのと同じ計算になります。

 

さらにプラスチック廃棄物による汚染は、この後もどんどんと増加の一途をたどるとみられています。

 

とくに新興国ではゴミ処理やリサイクリングのシステムが整っていないため、その増加の割合が大きいと予想されています。

 

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ノルウェーの打ち上げられたクジラの体内から発見されたビニール袋の一部)

 

【「マイクロプラスチック」の脅威】

またクジラなどの海洋動物たちが、いわゆる「マイクロプラスチック」の脅威にさらされていることも最近あらためて指摘されました。

 

マイクロプラスチックとは、直径5ミリメートル以下の小さなプラスチックの破片のことを言います。

 

プラスチックは長期的には腐食していくように見えますが、どんなに細かくなっていってもその物質がなくなってしまうことはありません。

 

「Trends in Ecology and Evolution」という専門誌に発表されたレポートでは、海に暮らす大型動物たちの調査をもっと進めることが促されています。

 

ビニール袋など目に見える大きさのプラスチックであれば、それが動物たちの内蔵にどう影響するかある程度分かっています。

 

しかしマイクロプラスチックについては動物たちにどのような悪影響を及ぼすのかまだよく知られていないのです。

 

2018年1月、EUは2030年までに、EU市場に出回るプラスチック製品を全てリサイクル可能なものにして使い捨てはなくす、という計画を発表しました。 そのために1億ユーロを出資することも明らかにしています。

 

同じタイミングでイギリスも、2042年までにプラスチック廃棄物をなくすという目標を発表しています。

 

すでにクジラやサメの一部は乱獲やその他の汚染によって絶滅の危機に直面しています。

 

日本が今後も捕鯨の継続を主張するのであれば、ほかの国よりも積極的に海の動物たちを守る行動を起こす責任があるのではないか、と強く感じています。

 

 

 

Whale found dying off coast of Norway with 30 plastic bags in its stomach

Whale and shark species at increasing risk from microplastic pollution – study | Environment | The Guardian