ブリーダーに頭数制限・ペットショップが里親センターへ 豪ヴィクトリア州の「オスカー法案」に注目

   

オーストラリアのヴィクトリア州ではこのたび、犬のブリーダーやペットショップの活動に大きな制限を加える法案が可決されました。

 

このたび州議会で可決された改正法では、子犬の量産の禁止、ペットショップ経営の改善、そして犬や猫のオンライン販売のトレーサビリティ(販売者や購入者を追跡できること)、が論点になっていました。

 

そして議会での審議や一般公聴会、獣医師会からの意見、動物愛護・救助団体、また当事者であるブリーダーやペットショップなどからの意見聴取を経て、今回の法改正に至りました。

 

【ブリーダーの飼育できる雌犬の頭数に制限】

いわゆるブリーダーと呼ばれている業者たちの(すべてではなく)ほとんどは、雌犬を多数飼育し、オスの種犬と交配させて数多くの子犬を産ませるという方法を行っています。

 

これまでオーストラリアのみならず世界各国で、こういう業者に飼育されている雌犬たちの生活環境が非常に劣悪であることが指摘され続けてきました。

 

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見方によっては、子犬という「商品」を製造させるための「機械」のような扱いをしているところもあるのです。

 

しかし2020年4月からヴィクトリア州では、ブリーダーたちが飼育できる雌犬の頭数は最大で10頭、特別な厳しい要件を満たしたブリーダーであっても最大50頭に制限されることになります。

 

ブリーダーの飼育できる頭数に制限を設けるのは、オーストラリアでは初めてのことです。

 

雌犬たちが小さな小屋に詰め込まれ、ペットショップに売り飛ばすだけの目的で子犬を大量に産み続けるという残酷なシステムが、ヴィクトリア州では終わりを告げることになるのです。

 

【ペットショップ】

今回の法改正により、最終的にはペットショップが子犬を販売することができなくなるとみられています。

 

2018年7月1日以降、ペットショップは公式な承認を得たところから連れてこられた動物だけを販売できることになります。

 

具体的に「承認を得たところ」とは、動物保護施設や登録済みの里親紹介所などです。

 

つまり今後ヴィクトリア州のペットショップは、保護された犬たちの里親センターのような存在になっていくと考えられます。

 

【トレーサビリティ】

今回の法改正では、犬を売るときには、その犬がどこで育てられたものかを示す登録番号を付与することも要求されることになりました。

 

現在、ヴィクトリア州で産まれる子犬のうち70%、頭数でいうと年間6万頭はどこで生まれたのか(つまりブリーダーは誰か)特定できない状態になっています。

 

どこで生まれ育てられたかをハッキリと分かるようにすることで、その犬がどのような飼育状況で暮らしてきたのかを特定できるようになるわけです。

 

これも闇営業のようなことを行うブリーダーの締め出しにつながると期待されています。

 

【オスカー法案】 

この画期的な法改正案は「オスカー法案」と呼ばれてきました。

 

このオスカーという名前は、この法案のために活動を続けてきた人が飼っているトイプードルの名前です。

 

オスカーもまた、かつてはブリーダーによって使われたいた種犬でした。

 

5年にわたり種犬として小屋の中に閉じ込められ、子犬を産むためだけに雌犬と交配させら続けてきたのです。

 

その後、オスカーを引き取った里親がこのオスカーの過去を知り、法改正に向けた運動を始める決意をしたのです。

 

オスカーは現在11歳。

「彼がこの運動を促してくれたんですよ」と里親でありこの運動を続けてきたトランターさんは語っています。

 

 

 

(出典) 

Puppy farming: Victoria bans cruel practice

Puppy farming banned in Victoria | Australia news | The Guardian