酪農場を引退したウシたちを見捨てない クラウドファンディングで資金を募り保護区域に移送

 

 

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アイルランド酪農家だったジル・スミスさんは、このたび酪農業から引退することになりました。

 

しかし、それまで自分の農場でいっしょに働いてきた70頭のウシたちを、単に「家畜としての用が済んだ」というだけの理由で手放したくはないと考えました。

 

通常、酪農家たちの手放した家畜たちは業者によって屠殺場へ送られ、殺されてしまうことになるからです。

  

 

クラウドファンディングで移送資金集め】

こんなスミスさんの希望を耳にしたあるチャリティ団体が、スミスさんに代わってクラウドファンディングのサイト「Go Fund Me」にページを設け、広く支援を求めました。

 

そしてアイルランドからイギリスへの動物の移送費と獣医師への支払いに必要な6,500ユーロを募ることにしたのです。

 

「何年ものあいだ一生懸命に働いて収入をもたらしてくれた動物たちには、引退後もみんなで一緒に暮らし続ける権利があるとオーナー(=スミスさんのこと)は感じています。70頭のウシをいっぺんに引っ越しさせるのはとても大きな希望であるとは思いますが、ぜひ「ヒルサイド・アニマル・サンクチュアリ」での暮らしを約束してあげたいと希望しています」。

 

この「ヒルサイド・アニマル・サンクチュアリ」とはイギリスのノーフォーク州にある動物たちの保護地域です。

  

"とても大きな希望" ではありながらも、このクラウドファンディングを始めてから1か月もしないうちに9,000ユーロを超える額が寄せられました。

 

目標額6,500ユーロを超える分はこの後ウシたちが暮らすことになる「ヒルサイド・アニマル・サンクチュアリ」に寄付され、今後の飼育費に充てられることになっています。

 

全70頭のうち、まずは半数がイギリスの保護区域に送られ、残りはあとから送られる予定です。

 

スミスさんは「支援者のみなさんのおかげで、私も生き返った気分です。ウシたちが最後の日まで平和に暮らすことを望んでいます」

 

「可愛い子猫なら資金を惜しまない人もいるでしょうが、家畜のウシにこれほどの親切心を示してくれるとは思いませんでした。みなさんがうちのウシたちをそこまで気遣ってくれことが信じられないくらいです」とスミスさんは大いに安心しています。

 

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この保護区域には他にも数百頭の動物たちが暮らしています。

 

これらの動物たちも、やはり酪農場から送られてきたものです。

 

最近では、あらたに63頭の家畜をイギリス国内の別のオーナーから引き受けました。

 

このオーナー自身がヴェジタリアンで、自分といっしょに働いてきた動物が殺害されてしまうことに耐えられなかったのです。

 

「63頭のうち数頭については買い手が見つかる可能性がありました。しかし63頭みんなで一緒に暮らし続けてほしかったのです。すでに老齢に達している動物ばかりですので、あのままでは屠殺場に送られるしかありませんでした」。

 

 

【家畜と酪農家の幸せな引退】 

スミスさんのためにクラウドファンディングを行ったチャリティ団体は「今までアイルランドの酪農場で働いていた動物たちが、引退後に他の国の保護区域に移送され余生を過ごす、という例はありませんでした。そういう意味でこのプロジェクトは歴史的なものだったのです」と語っていいます。

 

そしてこれが「酪農場で乳製品のために働き続けた動物たち、そしてその動物たちと一緒にキャリアを終えたいと願っているオーナーたち」の幸せな引退のきっかけになるでしょう、と述べています。

 

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