トラの生息数はわずかながら増加 しかし本当の回復までは長い道のり
2016年、世界自然保護基金(WWF)はトラの生息数が2010年の3,200頭から3,900頭へ増加した、と発表しました。
密猟を取り締まるパトロールを導入したり、生息地の保護に取り組んだ結果であると見られています。
わずか700頭という文字通りの「微増」ですが、これは喜ばしいニュースと言えるでしょう。
【餓死したメスのトラ】
しかし、このような前向きなニュースの後、今年に入ってからとてもショッキングなニュースがありました。
ロシアのルチェゴルスクという場所で、若いメスのトラ1頭が車の下に寝そべっているところを発見されました。
その脚の先はもぎ取られており、すでに死んでいました。
通報をうけたWWFの担当者はその死体を施設に運び入れ、詳しく調べることにしました。
しかし調査の結果、死因は交通事故ではなく、餓死だったのです。
このメスは密猟者たちの仕掛けたワナに引っかかり、そこから逃げ出すために自分で足を食いちぎってしまったと見られています。
自由に動かすことができない体を引きずることになったこのトラは、当然のことながらエサを捕まえて食べることができないまま過ごしました。
そして体はどんどん弱っていったのです。
空腹で衰弱した自分の体を守ろうとするかのように駐車してあった自動車の下に隠れ、そのまま餓死したものとみられています。
【密猟者たちによるワナ】
密猟者たちは、わざわざ林業の専門家たちを雇ってトラたちの暮らす森林に道をつくらせています。
トラの生息地は自然保護区に指定されている場合も多く、その場合はこの森林伐採を行った時点ですでに違法行為がなされたことになるのです。
こうして勝手に作った道を通り、トラの生息地の中にワナを仕掛けます。
捕まったトラがもし生きていれば、衰弱して動けないトラに向かってライフルを発射するという汚いやり方で殺害し、最後は皮をはいで売り飛ばす、ということをしているのです。
こういった人の手による殺害がアムールトラ(シベリアトラ)の死亡数の70%以上をしめている(2010年)、と言われています。
上記のメスのトラのように、命が助かっても体の一部が不自由になりエサの狩りができなくなってしまう場合があります。
(この写真は2005年にインドネシアで撮影されたスマトラトラ)
こういうトラたちは近くの人里に出没し、家畜や人を襲うこともあります。
人が仕掛けたワナがきっかけで人が襲われるという、皮肉な結果にもつながっているのです。
【過去100年で97%のトラが消える】
ロシア政府は最近、トラの生息地での森林伐採を制限し、密猟やトラの体を使用して生産された物品の所持に対する罰則を厳しくしました。
しかしトラの生活を取り囲む環境は相変わらず危機的状況が続いている、とWWFは語っています。
過去100年にわたって、世界のトラの生息数は97%減少したと言われています。
WWFの掲げている目標は、世界のトラの生息数が2022年までに6,000頭を超える、というものです。
過去1世紀をかけて失ったトラの命を取り戻すのは、まだまだ長い道のりであることがわかります。
Source:
Anti-poaching drive brings Siberia’s tigers back from brink
Sumatran tiger loses paw in hunter's snare