イギリス総選挙の結果がもたらすもう一つの懸念 象牙取引の禁止を訴える王子と継続を目指す保守党

先日このブログで、イギリスのキツネ狩り復活の恐れについてふれました。

 

animallover.hatenablog.com

 

総選挙の結果は、キツネ狩り復活を支持する保守党が(議席は減らしたものの)政権の座にとどまる結果となりました。

 

実は保守党の政策で気になるのは、キツネ狩り復活だけではないのです。

 

 

【「象牙取引禁止」という公約】 

イギリスで2010年に行われた総選挙で、当時野党だった保守党が象牙取引禁止を公約に掲げました。

 

その総選挙で政権に返り咲いた保守党は、それから5年後の総選挙でもこの象牙取引禁止の公約を維持し続けました。

 

ボリス・ジョンソンロンドン市長(現外務大臣)やウィリアム・ヘイグ元党首などもこの公約を全面的に支持していました。

 

この動きはその他の経済大国にも影響を及ぼし、最大の象牙取引量をほこる中国も2017年中の象牙取引全面禁止を宣言するなど、ゾウの保護に向けて世界的な動きが見られるようになりました。

 

ところが、今年行われたイギリスの解散総選挙に向けて保守党が示した公約には、この象牙取引の禁止がすっかり抜けていたのです。

 

 

【アンティーク・ディーラーたちのロビー活動】

これについては、アンティーク・ディーラーの団体が保守党の政治家たちに対してロビー活動を行い、象牙取引禁止を公約から外すよう圧力をかけた、という報道がありました。

 

イギリスには「ブリティッシュ・アンティーク・ディーラーズ・アソシエーション」という有力な団体があり、ヴィクトリア・ボーウィックという国会議員がこの団体のトップを務めています。

 

ボーウィック議員はテレーザ・メイ首相に近い保守党議員の一人です。

 

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(ボーウィック議員とメイ首相)

 

かつて公約に掲げられていた象牙取引禁止案には条件が付いていて、あくまで1947年以降に製造された象牙商品の販売が禁止される、という内容でした。

 

一方、アンティーク・ディーラーの団体が扱っているのは、文字通りアンティーク(古美術)であるため、事実上1947年以前の製品ばかりであり、その意味での問題は起きないはずでした。

 

しかしディーラーたちにとっては、「象牙禁止」という世界的な風潮のおかげで自分たちの仕事がしづらくなっていると訴え、保守党の公約に不満を募らせていたと言われています。

 

また伝統的にオークションが盛んに行われているイギリスでは、象牙製品など古美術の競売を行っているオークション会社からの圧力もあったようです。

 

 

【ウィリアム王子も訴える象牙取引の禁止】

キツネ狩りについての記事でもふれましたが、イギリスという国はもともと動物愛護に熱心な国であるということは、あらためて強調しておきたいと思います。

 

イギリス王室のウィリアム王子は、象牙の販売は完全に禁止されるべきだと明言しています。

 

2016年11月にヴェトナムで行われた野生動物保護に関する会議に出席したウィリアム王子は、象牙は必要なものではなく、またゾウからもぎ取られた象牙など美しいものではない、と訴えています。

 

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「なぜ私たちはいまだに取引を続けているのでしょうか?象牙の取引は嫌悪感を引き起こすものだ、という明確なメッセージを私たちは各国の政府に示さなくてはいけません」

 

「中国はすでに全面禁止を宣言し、アメリカも法制度を整えました。イギリスを含めたその他の国は、いまその検討を進めているところです」。

 

果たしてイギリスの与党は王室からのメッセージまでも無視してしまうのでしょうか?

 

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Source:

Why would Theresa May ditch a pledge to ban ivory trading? | Life and style | The Guardian

Prince William urges leaders to support full ivory trade ban - CBBC Newsround