米コネチカット州 虐待された動物の権利のために弁護士選任が可能に

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アメリカでは毎年数千件の動物虐待が報告されています。

 

しかし、人が犠牲となる事件に比べると、動物虐待はどうしても裁判所での優先順位が低くなったり、場合によっては取り上げられないまま放っておかれることもしばしばあります。

 

そこで、この状況を変えようと乗り出したのがコネチカット州でした。

 

2016年末、コネチカット州の当局は、虐待されたり犯罪に巻き込まれたりした動物たちのために弁護士を選任する業務を開始しました。

 

自力で弁護士を雇うことのできない人や子供のために弁護士を用意する業務はすでに行われていますが、この対象に動物も含めることになったのです。

 

これまでコネチカット州では、動物虐待のうち実際に起訴されるのは20%にすぎず、たとえ有罪判決が出ても刑は軽いものが多いというレポートが出されていました。

 

 

【デズモンド法】

動物のための弁護士選任を定めたこの法律は、通称「デズモンド法」と呼ばれています。

 

2012年、アレックスという男性が自分の犬に餌を与えず、殴りつけ、さらに首を絞めて殺害するという事件が起こりました。

 

この犠牲になった犬がデズモンドという名前でした。

 

この残虐な事件に対し、検察は禁固刑を求刑。

 

しかし、結局アレックスは州の更生プログラムを受けるだけで済みました。

 

この更生プログラムは、最後まで終了すれば犯した罪が帳消しにされるシステムになっているのです。

 

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(生前のデズモンド)

 

 

【傷だらけのピットブルテリア

今のところ動物のための弁護士活動を引き受けてくれる法律家は計8人。

 

加えて、裁判所の許可が下りれば、これら8人の法律家たちは外部の専門家を雇い、検察が十分に時間を割り当てることができない種類の調査活動を依頼することができるようになっています。

 

例えば、虐待された動物を診察した獣医師に聞き取り調査を行い、その動物がどれほどの被害をこうむったかを立証できるよう証拠を集める、といった活動です。

 

このデズモンド法が施行されてから法廷で取り上げられた事件のひとつに、傷だらけのピットブルテリアが発見された事件がありました。

 

このピットブルテリアを追跡していくとある人家にたどり着き、そこにはさらに2頭の犬がいました。

 

その犬たちはお互いにケンカをしている痕跡があり、また飼育されていた場所はフンと腐った食べ物にまみれた状態でした。

 

保護された犬たちのうちの1頭は、安楽死させなくてはいけないほどダメージを受けていたと報告されています。

 

この件について裁判所は、飼い主を更生プログラムに送り込んで罪を帳消しにするのではなく、飼い主に今後2年間にわたって犬を飼ったり、犬と一緒に住むことを禁ずるとともに、200時間に及ぶ地域サービスの奉仕を命ずる有罪判決を言い渡しました。

 

 

【着実に広がる動物愛護法の研究】

ほかの州でこのような法律が制定されているところはまだないそうです。

 

しかし動物愛護法の研究はどんどん拡大しています。

 

2000年にはわずか9つのロースクールだけが動物愛護法に関するコースを開講していましたが、それが現在は150を超えるロースクールで行われています。

 

ここでいう動物愛護法とは、単に飼い主によるペットの虐待だけでなく、サーカスなどでパフォーマンスを強要されている動物や酪農場で暮らす家畜たちの権利もカバーした法律として、研究・学習が進んでいるのです。

 

アメリカではこのように、少しずつではありますが、動物愛護を法律で実現してゆこうとする動きが広がっています。

 

 

 

www.smithsonianmag.com