プラスチックの輪にはまり込み死亡したアザラシ 人のゴミが引き起こす惨たらしい結果
このアザラシは、まだ小さい子供だった時に、海中に流れていたプラスチックの輪にはまり込んでしまったと見られています。
プラスチックの輪が残ったまま体はどんどん大きくなっていき、皮膚を締め付け、さらには筋肉をむしばむほど食い込んでしまっています。
5月のはじめ、イギリスのニューカッスルにある海岸でこのアザラシが打ち上げられているのが発見されました。
そのときはこのアザラシはまだ生きていました。
発見した人は「海洋生物救助隊」という団体に連絡、専門の獣医師が現場に急行しましたが、そのときにはすでにこのアザラシは死んでいました。
連絡から獣医師の到着までわずか30分だったと伝えられていますので、発見されたときにはすでに手遅れだったのかもしれません。
海洋生物救助隊の人たちも、「今まで目撃した中でも最悪のケースのひとつ」と語っています。
※ショッキングな写真が載っていますので、閲覧の際はご注意ください。
【「輪」になっている廃棄物にはハサミを入れる】
このゴミを捨てた人も、まさかこんな結果になるとは思わなかったでしょう。
必ずしも人が直接海の中に投げ捨てたとは限りません。
海岸のゴミ箱に捨てられたプラスチックの輪をカラスなどが取り出してしまい、それが最終的に海の中に入り込んでしまうという可能性もあるからです。
海の自然保護に取り組んでいる団体では、輪になっているプラスチックにはハサミを入れてほしい、と訴えています。
細かく切り刻まなくても輪になっていないだけでこのような事態は避けることができるのです。
ビール缶などを一まとめにつなげるプラスチック、段ボール箱のまわりに巻かれている硬いプラスチックのヒモ(「PPバンド」と呼ばれるもの)、釣り道具に含まれる糸やネットなどは、必ず切って「輪」の状態ではなくしてから廃棄する、ということが必要です。
【海洋動物たちが巻き込まれる「ゴミの事故」】
かつてアラスカ州政府がアラスカからカナダにかけての海岸で8年間にわたって行った調査では、合計388頭のトドが、プラスチックの廃棄物に絡まったりルアーなどの釣り具を飲み込んだりする被害にあっていたことが判明しています(Featured video: Entanglement of Steller Sea Lions, Alaska Department of Fish and Game)。
ほかにもビニール袋などを食べてしまうウミガメや、体内から小さなプラスチック片が大量に出てきた海鳥などが、世界各国の海岸で数多く発見されています。
私たちが見れば明らかにゴミだと分かるものでも、動物たちには分かりませんし、そのことで「バカな動物が悪い」などと責めるのはおかしな話です。
日本はリサイクルや分別廃棄の意識が高く、海岸などに来てもゴミを持ち帰る人たちが多くいます。
ひと昔前に比べると日本の海岸はきれいになったともいわれています。
その点、ほかの国に比べると今回のアザラシのような事態は起きにくいのかもしれませんが、海の行楽の季節が始まるこの時期に意識をあらためたいところです。