アメリカ最大のサーカスが営業を終了 果たしてこれは動物愛護が定着した結果なのか?
「リングリング・サーカス」は146年の歴史を誇る世界でも最も有名なサーカス団のひとつでした。
このサーカスが2017年5月をもって終了することが、このたび発表され話題になっています。
【ゾウたちの引退により収益が減少】
かつてはサーカスの代名詞とまでいわれるまで繁栄したリングリング・サーカス終了の最大の理由は、収益の減少です。
このサーカスもやはり動物を使ったパフォーマンスを売り物にしていました。
しかし動物愛護団体から多くの抗議を受け続け、2015年にゾウをサーカスでは使わないことを決定。
2016年5月のショウを最後にゾウたちは引退しました。
それまでゾウたちは踊らされ、回転させられ、小さな台座の上に立たされ、そのたびにムチで体を打たれ続けてきました。
今はこのサーカスが運営するフロリダの保護施設に引き取られて暮らしているそうです。
このゾウの引退が引き金となって客足が減り、チケットの売上が大幅に減少。
収益は激減し、最終的にサーカスそのものの店じまいへとつながっていきました。
【3歳の子ゾウ ケニーの死】
以前からリングリング・サーカスの動物飼育状況に対しては、複数の動物愛護団体が批判を続けてきました。
1998年、このサーカスが所有していたケニーという名の3歳のアジアゾウが死亡しました。
死亡した当日、ケニーは明らかに体調を崩していたにもかかわらず無理やりショウに駆り出され、曲芸を演じさせられました。
その夜、飼育小屋の中で死んでいるところを発見されたのです。
これをきっかけに、サーカスでのゾウの扱いについて広く関心が寄せられるようになりました。
ケニーの死亡について連絡を受けた動物愛護団体「PETA」はアメリカ政府に通告。
政府当局は取り調べを行い、「ゾウにストレスを与えないための管理を怠った」ことと「ケニーが体調を崩した後もパフォーマンスを続けさせた」ことを挙げ、サーカスを告訴しました。
その後、アジアゾウの保護団体へ2万ドルを寄付することと引き換えに、この告訴は取り下げられました。
リングリング・サーカスはすでにゾウは引退させていますが、今でもライオン、トラ、ラクダ、ロバ、アルパカ、カンガルー、ラマなど多くの動物を保有しています。
サーカス終了後もこれらの動物には住む場所が与えられるので問題はないと、サーカス側は主張しています。
【動物愛護は良識として定着したのか?】
近年、動物愛護の精神が世界の良識となってきた結果、動物にムチを打って演技を強制するようなエンターテイメントは社会が受け入れなくなってきています。
アメリカを代表するサーカスの終了は、まさに動物に対する私たちの考え方が変化してきたことを表していると言えるでしょう。
しかし同時に、「ゾウを引退させたことでチケットの売上が減った」ということは、「ゾウが演技をするのであればチケットは売れ続けた」可能性があるということです。
つまり、今でもゾウが演技をするところを見たいと思っている人たちは存在する、と想定できます。
そう考えると、果たして本当に動物愛護の精神が私たち共通の良識となったと言えるかどうか、疑問が残るところです。