ガザ地区の動物園 ようやくすべての動物を保護

 

以前このブログでも紹介した「ガザ地区の戦闘に巻き込まれた動物園の動物たち」。

 

罪のない動物たちが事実上の監禁状態を強いられていたこの動物園にもようやく動物愛護団体が救助に訪れ、動物たちを少しずつ運び出し、ヨルダンの動物園やアフリカの野生動物保護区に移送して行きました。

 

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【密輸で運ばれた動物たち】

この動物園が劣悪な飼育環境に陥ってしまった直接の原因は、2014年にガザ地区が封鎖されたにより必要最低限の物資が動物園に届かなくなったことでした。

 

その結果、エサすら充分に与えられない悲惨な状態が2年間に渡り続いたのです。

 

しかし本当の原因は、2007年にすでに始まっていたともいわれています。

 

この動物園に住んでいた動物の9割は、実は密輸された動物たちでした。

 

ハマスの兵士たちが武器や食料を運ぶために地下に作ったトンネルを使い、ガザ地区に運ばれた動物たちだったのです。

 

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このときゾウの子供2頭が過酷な運搬作業に耐えられず、途中で死亡したことがわかっています。

 

翌年の2008年には戦闘で動物の多くが死に、2014年の戦闘でもまた同じことが繰り返されました。

 

その後はガザ地区に暮らす人たちは自分たちの生活で手一杯になり、動物園への来園者数が激減。

 

動物園のオーナー自身も、自分の生活を維持するのに精一杯の状態でした。

 

 

動物愛護団体も手が出せない状態】

この2014年の状態を耳にしたのが動物愛護団体「Four Paws」でした。

 

「ここのオーナーは気軽な気持ちで動物園を開園してしまったようです。近所で携帯ショップが成功していたのを見て自分も同じビジネスを始める・・・それと同じ感覚で動物園を始めたように見えます」と愛護団体の関係者は指摘しています。

 

団体としては急いで動物たちを救助したいと考えていましたが、場所が戦闘の絶えない地域であったことが大きな原因となり、なかなか救助活動を開始することができなかったのです。

 

また複雑な国境を通過するための特別許可がなかなか下りなかったり、各地域で通行料をチャージされてしまうため莫大な費用が発生してしまうことなども、活動を阻止してきた別の要因でした。

 

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【子ジカの話】

最も悲痛な例として救助隊たちの記憶に残っているのは、子ジカの話です。

 

この子ジカは、苦しい檻の中から逃げ出そうと狭いすき間に無理やり首を突っ込んだとき、ケガを負ってしまっていました。

 

そのケガは治療されないまま放置され、状態はどんどん悪化。

 

救助隊が到着する24時間前に死亡しました。

 

救助隊が駆けつけたときには子ジカはすでに死体置き場に運ばれていましたが、この子の母親はまだ状況を理解できず、檻の中を歩き回ってわが子を探していたといいます。

 

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【最後の1頭まで無事に救出】

このように多くの犠牲を出しましたが、生き残った動物たち15頭すべてがより安全で必要最低限のケアを受けられる場所へようやく運ばれました。

 

「ここは動物園ではなく監獄だったのです。しかし今は動物たちを苦しめたあの状況も終わり、安心しています」(団体関係者)。

 

最後の1頭であったトラも無事運び出され、南アフリカの野生動物保護区に移送されました。

 

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意外なことにこのトラは少々太り気味だったことが分かっています。

 

おそらく今まで質の悪いエサを食べさせられた挙句、狭い檻に閉じ込められて運動不足であったことが原因であると見られています。

 

それでも今は毎日十分な量のエサを食べ、特に健康上の心配もなく元気に暮らしているということです。

 

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