動物の「自撮り」をめぐって騒ぎ立てる人間たち
2016年の年明け早々に「サルに自撮り写真の著作権なし、米裁判所が判断」というニュースがありました。
これは、2011年に写真家デヴィッド・スレーター氏が、インドネシアの森林で撮影を行っていたときに手に入れた、サルの「自撮り」の話です。
撮影中にカメラを置いてちょっとその場を離れた瞬間に、その森林に生息しているクロザルがスレーター氏のカメラによじ登り、レンズを覗き込みながらシャッターを押しました。
そしてこの完璧な自撮りが残されたのです。
【サルは著作権を認められるのか】
この写真をめぐって、メディアからは
「これはクロザルが自分で撮影したものであるから、スレーター氏の作品ではない。したがってスレーター氏へ著作権の支払いしなくても、この写真を使えるはずである」
という声が上がってきたのです。
さらに動物愛護団体「PETA」は、この写真の著作権はクロザルに属するものであるから、この写真による収益は「生息地である森林の保全に役立てるべき」という主張をし、裁判所に訴えを起こしました。
しかし、米サンフランシスコ連邦裁判所は「サルは人間ではないので著作権を保有できない」という判決を下した、というニュースでした。
【ウマの自撮り(?)をめぐっても人は争う】
動物が関わる自撮りについての騒ぎは、サルだけの話ではないようです。
イギリスのウェールズに旅行に行ったお父さんと3歳の息子さんは、目の前に広がる広場を背に、一緒に自撮りをしました。
ところが、ちょうどいいタイミングで、近くで飼育されているウマが写真の中に入ってきました。
ウマもシャッターに合わせていい顔をしています。
お父さんはこの写真を旅行会社が主催するフォト・コンテストに応募し、そして見事2,000ポンド(35万円相当)の旅行券を勝ち取りました。
ここまでは微笑ましいニュースでした。
しかし、これを聞いたウマのオーナーは「私の許可を得ずに私のウマの写真を撮り、それで賞を得た」のは不当であるとして半分の1,000ポンドを要求してきたのです。
このオーナーは、歯をむき出すようにウマを訓練したのは自分である、とまで主張しているようです。
この争いの行方は今後の成り行き次第ですが、法律の専門家によれば「父子は公道で写真を撮っており、ウマは勝手に入り込んできたに過ぎない。しかも(上記のクロザルとは異なり)ウマ自身がシャッターを押したわけではない」ため、ウマやそのオーナーの権利は認められないだろう、ということです。
動物たちの自然な行動にもかかわらず、それを人間たちがやっかいな話にしてしまっている、典型的な出来事のようです。
(出典:Monkey selfies and equine photobombing: who owns animal photography?)