スペインの闘牛 国内でも反対派が多数を占める

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闘牛はスペインを代表する「伝統行事」とされており、それは本国の人たちにとってのみならず、私たちにも良く知られたイベントになっています。

 

しかし近年は、スペイン国内でも闘牛は残虐な行為であるとして非難する声が高まってきています。

 

観客数はこの7年間で54%も落ち込み、政府からの助成金で何とか持ちこたえている状況なのです。

 

 

【反対派が6割を占めた世論調査の結果】

スペインの16~65歳を対象に行われた調査によると、闘牛を続けることを支持しているのは全体の19%に過ぎないことが分かりました。

 

一方、闘牛反対を表明したのは58%にも上ったのです。

 

2013年に行われた調査では闘牛賛成派は3人に1人の割合でしたが、このわずかな間でそれが5人に1人の割合にまで激減したことになります。

 

とくに若年層での反対が強く、16~24歳の年齢層で闘牛に賛成しているのはわずか7%に過ぎないことが分かりました。

 

また16~34歳までに年齢層を広げてみても、賛成派は10%のみだったのです。

 

 

【春の選挙に影響を及ぼすか?】

闘牛はスペインの「伝統的なイベント」とされており、有力な観光資源とさえ考えられてきました。

 

しかし、「何の罪もないウシを殺し、それを見て楽しむ」という行為については1960年代以降長らく疑問視する声が続いてきました。

 

そして政府が闘牛禁止令を出すのも時間の問題、という声が多くあったのです。

 

スペインでは先月選挙が行われましたが、どの政党も過半数を獲得できなかったことから、今年の春にもう一度選挙が行われます。

 

この再選挙は、上記の闘牛に関するアンケートで闘牛反対(禁止賛成)が6割近くを占めた結果の発表後に行われる選挙であるため、立候補する政治家たちもこの世論を見込んだ政策を唱える可能性があります。

 

 

 

【ウシを使った闘牛以外の祭り】

この世論調査は「ワールド・アニマル・プロテクション」という動物愛護チャリティ団体が行いました。

 

この団体は最近、14万人の署名を集めてスペインの「メディナセリ」という町の町長あてに請願を行いました。

 

この町は「トロ・エンボラド」と呼ばれる残酷な祭りがおこなわれる所として知られています。

 

この祭りでは、ウシの角に火の吹き出す花火を取り付け、夜中の街道に放ち、人は興奮して近づいてきたウシから逃げ回って楽しむ、という行事が行われているのです。

 

スペインではほかにも「トロ・デ・ラ・ヴェガ」と呼ばれる祭りもあり、ここでは先のとがった金属製のやりを持った男性数人でウシを追いかけ、死ぬまで刺し殺すという行為が行われています。

 

 

【キャンペーンを続ける愛護団体】

ワールド・アニマル・プロテクションでは、スペイン、コロンビア、メキシコで闘牛が禁止されるよう1981年以来キャンペーンを行ってきました。

 

「闘牛などというのは、“伝統文化”という名目で動物を虐待しているにすぎません。伝統文化であっても、動物への残虐行為が許される理由はないのです。動物虐待の許される場所など世界どこに行っても存在しません。少なくとも近代化されたはずのスペインのような国では、許されないのです」

 

「前向きなスペインの政治家たちはこの民意をくみ取り、この現状に立ち向うべきです」。

 

ワールド・アニマル・プロテクションでは、スペイン政府が闘牛に助成金を拠出することをやめるよう呼びかけています。

 

こういった状況から、場合によると5年後には闘牛は行われていないだろうと予測する人もいます。

 

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