イヌはお互いの感情を理解しているのか? 新しい調査結果が発表される
イヌが人のあくびを真似たりすることはよく知られています。
また、人間の基本的な感情に対して「同調」するような反応を示すことも、多くの飼い主が経験していることでしょう。
ではイヌ同士の場合はどうでしょうか?
今回、イヌ同士もお互いの表情を一瞬にして理解し真似ることができる(少なくとも、そのように見受けられる)という調査結果が発表されました。
【お互いの表情を真似ることで社会的関係を築く】
人にはお互いの顔の表情を自然と真似てしまう癖があります。
他人が笑ったりほほ笑んだりするのを見ると、人は自分も同じ表情をすることでその人と「感情の共有」をする動物なのです。
そしてこの性質のおかげで、社会的動物としてのコミュニケーションが円滑になっているとも言われています。
同種の動物と社会的関係を築くという発想は、これまでは人のほかにチンパンジーやオランウータンなど霊長類にのみ備わった独特なものであると考えられていました。
しかし今回の調査結果によれば、イヌも人と同じ傾向を有していると想定でき、相手に同情する動物であると考えられる、とされています。
今回の調査では、複数のイヌの様子を50時間にわたって録画し、前足を曲げてしゃがんでいる様子や歯を見せてリラックスしている様子などを記録した動画の分析を行いました。
この分析結果から、あるイヌは他のイヌの顔の表情や体の動きを見て、その感情を一瞬で読み取り、それと同じ表情や体の動かし方をすることで同調・同感を示しているようだ、と研究者は述べています。
【「真似をするのはイヌの習性」と疑問を呈する声も】
しかし、もっと詳しい研究が必要だと指摘する専門家もいるようです。
感情を読み取っているかどうかは別にして、イヌと言う動物はいわゆるボディランゲージを読み取る能力がとても高い動物です。
イヌがほかの動物に比べてしつけがしやすい動物であるのは、これが理由です。
またほかのイヌや飼い主の動きを真似ることで、「今やっている遊びを続けてもっとかまって欲しい」という自分の希望を示そうとする傾向があります。
そのため、単に表情や体の動きを真似る傾向があるというだけで、イヌにも人と同じように相手の感情に共感するという能力があるとは言い切れない、と疑問を呈しています。
【本能 or 能力?】
いずれにせよ、相手の真似をするのが大昔の祖先から備わっている本能なのか、ペットとして飼いならされた過程で身に付けられた能力なのかは分かっていません。
本能のように見えるという意見がありますが、科学的に立証できる材料は今のところないようです。
今回の調査結果を発表した研究チームでは、イヌの祖先とみなされるオオカミについても同じ調査を行うことで、この「真似グセ」の起源について解明する予定です。
そして人とイヌの複雑な関係について、より深く追求してゆきたいと考えています。
(Canine copycats can mirror other dogs' emotions - BBC News)