ライオンもサーカスから救われる 南米ペルー
先日、長年インドのサーカスで苦しんできたゾウが動物愛護団体に保護された、というニュースを紹介しました。
今回は南米ペルーで、はやり長らくサーカスで酷使されてきた33頭のライオンが飛行機でアフリカへ戻され、祖先が育った土地で残りの時間を過ごせる見通しが出てきた、というニュースです。
【虐待に近い状態で扱われていた「百獣の王」たち】
サーカスの「目玉パフォーマー」であったライオンたちは今までひどい待遇の中で苦しんできましたが、来月ジャンボジェットに乗って故郷に戻れる可能性が高くなりました。
この運搬には、ライオン1頭ごとに、ファーストクラス並みのチャージが課金されます。
今回の救助活動を行ったのはイギリスの動物保護団体で、彼らは合計50万ポンド(約9,200万円)の費用をかけて大西洋を横断する運搬を行うことになりました。
この動物愛護団体(アニマル・ディフェンダーズ・インターナショナル、ADI)はサーカスで酷使されている動物たちを開放する運動を1年がかりで実施してきました。
この運動を通して、ペルーやコロンビアの政府に対し野生動物をサーカスで使用することを禁止ずる法律が施行されるよう働きかけを行ってきたのです。
この活動が実を結んだおかげで、ライオンたちにとって長く続いた苦しい生活がようやく終わることになります。
ひどい傷を負いながらライオンたちが今まで耐え忍んできた生活は、おぞましいものがあります。
ほとんど全てのライオンは爪が剥がされており、あるものは目玉がなくなり、また視力を失っているものもいます。
さらにその他の多くはサーカスでの厳しいパフォーマンスを強いられた結果、牙を失っているのです。
【大規模な救助活動】
動物愛護団体ADIの責任者は、これだけの数の大型動物を同時に運ぶため、大規模な救助活動になる、と語っています。
「規模が大きいと同時に莫大な費用のかかる作業ですが、とても効果のあるやり方です。私たちは野生動物をサーカスから保護する活動を1年がかりで取り組んできましたが、今回、このペルーからの運搬作業によって完結することができるのです」
「これからは一緒に働いてくれる人材が必要になります。ライオンたちは今までペルーの人々を楽しませるために長い間苦しんできましたが、今回ようやく引退して自然の生活に戻ります。特に若いライオンは今後20年以上にわたってケアが必要なものもおり、そんな彼らの手助けをしてくれる人が必要なのです」
ADIは今回のプロジェクトで、ボーイング747でライオン33頭をアフリカへ運び、さらに南アフリカの野生動物保護区域でこれらのライオンたちが暮らし始めるところまで手助けを行います。
一連のプロジェクトは、ライオンたちがアフリカの保護区域での新しい生活に馴染むための「キャンプ」を行うことで、大詰めを迎えることになります。
ライオンたちは今のままの状態でアフリカの大地に戻っても、獲物を捕まえて生活するような習慣は身についていないのです。
しかし今回の運搬先である動物保護区域では、実際の野生生活に近い状態をライオンたちに提供できることになっています。
【あとは南アフリカ政府からの許可を待つのみ】
この33頭のライオンたちが経験する変化は、今までの世界からまったく変わってしまうものになるでしょう。
これまでの彼らの生活は小さな檻の中に限られており、その外では単調なサーカス芸の繰り返しに過ぎなかったのです。
このライオン救助作戦には多くの支援が寄せられ、かつて007ジェームズ・ボンドを演じた俳優のロジャー・ムーアも支援を呼びかけました。
今までもこの動物愛護団体ADIが行った救助作戦により、100頭近くの動物が救助されています。
現在、南アフリカ政府からライオン受け入れの最終許可が下りるのを待っている状態です。
それを乗り越えられれば、年明け1月には運搬される予定です。