読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

シープドッグ(牧羊犬)がペンギンの警護にあたる オーストラリアの「マレンマ計画」

f:id:georgekato:20151130181321j:plain

 

2004年10月、オーストラリアのヴィクトリア州にあるミドル・アイランドという島で、キツネが180匹のペンギンを襲撃し殺害した、というショッキングな出来事がありました。

 

犠牲者数はその後も増え続け、一時はこの島に800匹生息していたペンギンも、2005年には10匹以下にまで減ってしまったのです。

 

 

外来種のキツネの餌食にされたペンギン】

ペンギンの中でも最も小さな種類である「コダカペンギン」は、かつてオーストラリアの南海岸ではふつうに見かけることができるものでした。

 

しかし19世紀になってアカギツネがこの地域に生息し始めてから、コダカペンギンは格好の餌食となってしまいました。

 

18世紀後半、ヨーロッパから移民が移り住み始めてから、オーストラリアでは多くの哺乳動物が絶滅しています。

 

これは移民たちが、小動物を食べてしまうネコやキツネなどの肉食動物を持ち込んだのが原因です。

 

その後、オーストラリア大陸の南海岸ではコダカペンギンは見当たらなくなり、現在ではミドル・アイランドなどの島にしか生息できなくなっているのです。

 

しかしこの島は、潮の満ち引きのタイミングにより大陸と陸続きになる時間が発生します。

 

そのため、この島にも大陸からキツネが入り込んできてしまい、ペンギンが次々と襲われてしまったのです。

 

 

f:id:georgekato:20151130181919j:plain

 

 

【最初はニワトリの警備を担当】

キツネに命を狙われるのは、ペンギンだけではありません。

 

ヴィクトリア州の一部ではニワトリの酪農が盛んに行われていますが、ここのニワトリたちもまた、キツネに絶えず襲われていました。

 

そんな酪農家の一人であるマーシュさんは、一時はライフルを持って夜通し外に立ち、キツネがニワトリから離れていくよう脅し続けていました。

 

ある夜明け、ふと耳にした犬の鳴き声を聞いたマーシュさんは、妙案を思いついたのです。

 

「朝の3時に、近所の家で飼っている犬が吼えているのが聞こえたんだ。私は物事を理解するのに時間がかかるタイプでね。何日間かたって初めて、あの犬は私が追っ払おうとしているキツネに向かって吼えていたんだ、って気づいたんだよ」

 

まもなくマーシュさんはマレンマ・シープドッグの子犬を飼い始めました。

 

 

【マレンナ・シープドッグとは】

マレンマ・シープドッグは家畜とともに暮らしながら、その家畜の天敵を追っ払うという家畜護身用のイヌです。

 

縄張り意識が強く、侵入者に対して強い警戒心を示す一方、人や仲間の動物にはとてもなつくという習性を持っています。

 

またこの犬は独立心が強いことでも知られています。

 

ある広さの場所を守るようにしつけると、その場に長い間にわたって居つづけることが出来ます。

 

数日分のエサを置きっぱなしにしても、すぐに全てを食べてしまわず、長い期間にわたって少しずつ食べ続けるのです。

 

マーシュさんの最初のマレンマ・シープドッグは「ベン」と名づけられ、自分に任された仕事をいち早く覚え、農場に入り込んでくるほかの動物を外に出るまで追っ払ってくれるようになりました。

 

f:id:georgekato:20151130183408j:plain

 

 

【そしてペンギンの警護へ】

ミドル・アイランドに生息するペンギンがキツネに襲われて数が減っているという話を聞いたとき、マーシュさんはマレンマ・シープドッグがペンギンを助けることができるだろうと提案しました。

 

「ペンギンなんて、ニワトリがタキシードを着ているようなものだよ」。

 

マーシュさんの農場でアルバイトをしていた大学生のウィリアムズさんは、島にシープドッグを放つというアイデアを記したレポートを書き、さらにそれを公式の書式に落とし込んで州の環境保護局まで提案書として提出しました。

 

しかし、ペンギンの数がどんどん激減しているにもかかわらず、彼の提案に対する承認プロセスは遅々として進みませんでした。

 

ペンギンの数が6匹にまで減った2006年になって、ようやく最初のマレンマ・シープドッグがペンギンのために働くことになり、島に「動員」されました。

 

「オッドボール」と名づけられたこのイヌは、マーシュさんのところで活躍しているベンの娘です。

 

このとき以来、ミドル・アイランドのペンギン生息数は再び増え始め、150匹まで増えました。

 

また、キツネに襲われてしまうペンギンも発見されていません。

 

f:id:georgekato:20151130181952j:plain

(現在はペンギン用のシェルターも随所に用意され、キツネから身を守れるようになっている) 

 

 

【同じ戦略を他の動物の保護にも適用へ】

マレンナ・シープドッグを使ったミドル・アイランドでの保護活動が成功したことを受け、コダカペンギンだけでなく生息数の減少が見られるそのほかの動物についても同じ方法が使えるのではないか、と注目を浴びています。

 

たとえばヴィクトリア州では、現地に生息する小型の動物「バンディクート」の保護のためにもマレンナ・シープドッグを動員することにしており、すでにその試運用が始まっているということです。

 

f:id:georgekato:20151130182426j:plain

(バンディクートの一種「ヒガシシマバンディクート」)

 

Australia Deploys Sheepdogs to Save a Penguin Colony - The New York Times