トラとヤギ 捕食関係を乗り越えた(?)意外な関係
ロシアにあるサファリパークで飼育されているトラのエサとして、一匹のヤギが放たれました。
飼育員たちは遅かれ早かれヤギは襲われて食べられてしまうという、生態系に従った結果を予想していました。
しかし、この2匹は意外な関係を生み出し、人間たちを驚かせています。
このトラはアムールトラ(シベリアトラ)と呼ばれる種類で、今まで自分が寝ていた場所をヤギに譲って仲良く暮らし始めたのです。
驚くべきことは、このヤギがまったく恐れをいだかず、むしろ自分からトラをじろじろと見つめていることです。
このサファリパークでは週に2回、生きた動物をエサとしてこのトラに与えています。
すでにこれは習慣となっているため、トラはエサとして放たれたヤギやウサギを襲って食べることには慣れていました。
しかし、今回のヤギに関しては事情がまったく違っているようです。
このヤギの「勇姿」を見た飼育員たちは、「ティムール」(鉄という意味)という名前をこのヤギに与えました。
おそらくこのヤギは今まで一度もトラを見たことがなく、トラを恐れるべき動物として認識していないのではないか、とサファリパークでは話しています。
一方、トラのほうは生まれつきとても慎重な性格をしています。
捕食関係をまったく無視したヤギの行動を見て、あえてトラブルになりそうなことからは距離を置いているように見えます。
さらには、今までこのトラがずっと使っていた寝床にヤギが入り込み、自分の寝床として使い始めているのです。
サファリパークによって撮影された動画を見ると、ヤギはトラの後をゆうゆうと追いかけているように見えます。
また、トラが地面に座り込んで体を休ませるという肉食動物特有の行動を見せると、ヤギはその近くに生えている草をむしゃむしゃと食べ始めるのです。
飼育員が見ている限り、この2頭は毎日いっしょに歩き回り、まるで友達であるように見える、とのことです。
ヤギはトラを追うように歩いていることから、このトラを自分のリーダーとして考えている可能性があります。
ヤギは群れを成して行動する動物ですので、これは十分ありうることだと考えられます。
もちろん、エサとして送り込まれた動物のとる行動としてはきわめて奇妙なことです。
飼育員は「ヤギのティムールの怖いもの知らずな行動と、トラの慎重さとがたまたまマッチして、このような矛盾した関係を生み出したと思う」と話しています。