オーストラリアのコアラ 干ばつが原因で失明の怖れも
2015年、オーストラリアは干ばつに見舞われています。
北東部に位置するクイーンズランドはその被害に苦しんでいる地域のひとつで、現地に生息するコアラも同じくエサ不足に悩んでいます。
ユーカリの葉を主食とするコアラですが、干ばつのせいでエサが不足しているため、人の住む地域にも現れてしまうのです。
住宅街に現れたコアラたちは、自然の習性として街路樹によじ登って食べる葉っぱを探そうとします。
しかしそこには思わぬ危険が潜んでいるのです。
【「グリーン・アント」の存在】
住宅街にある木々には、オーストラリアに生息するアリの一種「グリーン・アント」が住み着いています。
このグリーン・アントは、コアラの顔にくっつき、目に噛み付いてしまうのです。
グリーン・アントの口からは「蟻酸(ギ酸)」と呼ばれる液体が発せられ、これがコアラの目に入り込んでしまいます。
ギ酸の入り込んだ角膜はかすんだ状態になってしまい、視力に大きな悪影響を及ぼします。
角膜は化膿しだんだん目が見えなくなるため、コアラは手で目をこすってしまい、そのせいで化膿はさらに悪化、目のかすみはますますひどくなってしまいます。
化膿のせいで目に痛みを感じているはずであり、また最悪の場合、失明してしまうという恐れもあるのです。
また、視力のなくなったコアラは木から降りて、そのまま手探りで地上を這い回るため、車道に出てきてしまうという問題も起きているのです。
干ばつのせいでグリーン・アントが大量発生しているとも見られており、これも原因のひとつと考えられているようです。
(グリーン・アントの一種)
【コアラの治療をボランティアで行う地元の一家族】
こんな状況を見た現地のある家族が、自宅に治療用施設を立ち上げ、苦しむコアラの世話に励んでいます。
(コアラの治療に取り組んでいるBeeさん)
この家族が自宅の裏庭に建設した小さな施設で扱えるコアラの頭数は5匹までですが、最近は助けの必要なコアラを発見したという連絡が、この家族に絶え間なく届いているということです。
夫婦と娘一人の3人家族であるこの家庭では、獣医師である女性がコアラの治療に専念し、その夫と娘さんがエサの準備を行う、というチームワークでコアラのリハビリに取り組んでいます。
この活動が地元自治体にも認識され、助成金を受けることができました。
そして治療施設に「診察室」も開設することができたのです。
しかしグリーン・アントに目をつぶされてしまったコアラが次々に発見される現状では、もっと大きい施設と運営資金が必要な状態です。
「私たちは運ばれて来たコアラに軟膏を塗り、エサを与え、元気になるまで保護してあげています。しかし手当ての必要なコアラ全てを収容してあげるスペースはないのです」
この家族では、リハビリの終わったコアラにタグをつけてまた野性に返してあげており、つい最近も元気になった1匹のコアラが野生に戻って行きました。
【住宅地域の拡大でコアラの生息数が減少】
クイーンズランドでは、一部の地域ではコアラの生息数が把握できていない場所もありますが、南部では生息数が明らかに減少しています。
最も大きな原因は、住宅地域が拡大されているため、コアラが自然に生息できる森林がどんどん小さくなってしまっていることだ、と指摘されています。
参考:Koalas injuries from green ants as drought forces them to migrate or starve | Daily Mail Online