イギリスでハリネズミの生息数が減少 「生垣」がなくなったのが原因か
広大な自然で知られるイギリスの田園地域ですが、近年ハリネズミの数が激減しているという調査結果が発表されました。
農業用地の開発が進んだことなどから、生息地が破壊されてしまったのが主な原因です。
正確な生息数を見積もることは難しいのですが、現在ではイギリスに生息するハリネズミの数は100万匹に満たないと見られています。
前回生息数の調査が行われたのは1995年で、その時は155万匹という数字が発表されていました。
【ハリネズミの自動車事故件数】
田舎の自動車道などでは、ハリネズミが無防備に道路を横断してしまいます。
しかし体がとても小さいため、運転中の車中から発見できることはとても難しいのです。
そのため、路上でクルマにひかれてしまうハリネズミが後を絶ちませんでした。
しかし、近年はこういったクルマにひかれてしまうハリネズミの数まで減少しています。
これはハリネズミが上手に自動車道を横断できるようになったからではありません。
ハリネズミの数そのものが減ったため、ハリネズミが巻き込まれてしまう事故の件数が減っただけなのです。
【天敵の増加】
また、これらの地域でアナグマの生息数が増加していることも、ハリネズミの減少に関係していると見られています。
アナグマはハリネズミのエサを奪ってしまうのみならず、ハリネズミそのものも食べてしまう天敵です。
以前に行われた調査でも、人の手でアナグマの捕獲を行っている地域は、ハリネズミの生息数に変化がないことがわかっています。
【絶滅の可能性は低い】
1950年代には、ハリネズミのイギリス国内の生息数は3,000万匹と推定されていました。
しかしこれはあまり信頼できない調査方法によるものでしたので、過大推定されていた可能性があります。
専門家たちは、生息数は減少しているものの、今でもイギリス中でふつうに発見されているため、ハリネズミが絶滅してしまう可能性は少ないだろうと述べています。
しかしこのままの状態が続けば、イギリス国内では珍しい動物になってしまうかもしれない、と警告も発しているのです。
【生垣にすむブタ】
ハリネズミは英語で「hedgehog」と呼ばれています。
「hedge」は生垣、「hog」はブタです。つまり生垣にすむブタ、というのがこの小動物の英語流の呼び方となっています。
イギリスの田園地方に古くから存在する生垣は、低木を並べて作られます。
ハリネズミはこの低木の中で巣をつくり、天敵から身を守り、またエサのある場所への通路として使って生活しています。
しかし近年、農家では生垣の低木を切り倒し、より広い農場を作って効率的な農業を試みています。
残っているわずかの生垣もメンテナンスが行き届いてない状態です。
一方、イギリスの都心部にもハリネズミは見られますが、こちらでもハリネズミの生息地の破壊が起きています。
かつては住宅街にも低木による生垣がふつうに使われていましたが、現在では金属製のフェンスに取って代わられ、また地面も土からコンクリートに代えられてしまっているのです。
「hedgehog」の生息するhedgeそのものが都会でも田舎でもなくなってしまっている現代では、生息数の減少は止められないのかもしれません。
(Hedgehog numbers drop by more than half in rural areas as habitats destroyed - Telegraph)