ビーバーとコカコーラ 共同事業でインドの水資源を復活
コカコーラ社は意外なパートナーと協力して、インドの水資源回復に取り組んでいます。
そのパートナーは「ビーバー」です。
【コカコーラの水資源回復プロジェクト】
コカコーラは10年ほど前、インドに設立した生産工場で大量の水を使いすぎているとして、現地で非難を受けていました。
コカコーラのような飲料メーカーにとって、まさに水は最大の原材料であるわけですが、あまりに大量に使用したため、現地の産業や住民にも影響が出るほど水資源が減ってしまったのです。
2007年、コカコーラはほかの企業や政府と協力してこの問題に取り組むプログラムを発表しました。
このプログラムは、コカコーラが販売する飲料と同量の水を2020年までに水資源として回復させる、というものでした。
【ビーバーとの協力でプロジェクト遂行】
ここで登場したのはコンクリートで塗り固めたダムではありません。
人よりもはるか昔からダム造りの名人であったビーバーです。
ビーバーのダム造りによる水資源回復プロジェクトは、すでにアメリカで成功例がありました。
カリフォルニアの森林火災でダメージを受けた河川に再び水をよみがえらせるため、ビーバーを放ちダム造りをさせ、水流の復活に成功したのです。
インドでもこのビーバーにお願いすることになりました。
【ビーバーの定住とダム造り】
ビーバーは家族単位で行動する動物ですので、2~4匹まとまって暮らせるように計画を立てる必要がありました。
また、現地に住んでいる住民の迷惑にならないように準備を進めることも求められました。
ビーバーがダムを造ってしまうために、近くの農村に水が届かなくなるという問題が想定されたのです。
そのため、ビーバーが放たれる前に人が現地に赴き、ダムが出来ても問題ない場所を見繕い、またライオンやオオカミなど天敵になりうる動物にビーバーが襲われてしまうことがないように準備をしました。
2014年、13箇所に38匹のビーバーが放たれました。
そのうち8箇所でビーバーの定住が確認されました。
いったん住み着いたビーバーはまもなくダム造りをはじめ、数ヶ月間には木の枝を1メートル以上の高さにまで積み上げているのが確認されました。
【すでにビーバーの効果が確認される】
コカコーラによる水の大量消費だけが解決されたわけでありません。
温暖化のため、近年はインド西部の山地の雪が解けてなくなってしまう傾向にありますが、ビーバーのダムはそういう水もせき止めて貯蔵し、人の利用に役立ててくれるのです。
ビーバーは定住する性質のある動物であるため、ある場所でダム造りを始めれば、今後も同じ場所でダムを造り続けると考えられます。
そのため、今回の水資源回復は一回の効果で終わることなく、来年以降も期待できるということです。
ビーバーとの共同事業のおかげもあり、コカコーラは2015年中に水資源回復の公約を実現できる可能性が高まった、ということです。
【ビーバーの存在の大きさ】
19世紀にはビーバー皮の帽子が流行ったことがあり、乱獲が行われました。
20世紀初頭には、それまでの平均生息数のわずか1%にまで減少していたといわれています。
ビーバーが減少するとビーバーが造るダムの数が激減するため、川の水がはやく海に流れ出てしまいます。
その結果、陸上の貯水が減り、川床の土も多量に流しだされてしまうという環境問題を引き起こすことになるのです。